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「新しいNHKらしさ」探ったGW5番組…「タレントありきでない」と言うけれど

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 ネット社会の進展や若者を中心とするテレビ離れを踏まえ、コスト削減など構造改革が求められるNHK。受信料値下げも迫られる中、今春から総合テレビの夜の時間帯を「“新しいNHKらしさ”を追求する番組開発ゾーン」と位置付け、年50本程度を繰り出していくことになった。その第1弾となる5作がゴールデンウィークに放送されたが、制作陣の狙いが今一つ見えてこない。率直な疑問をぶつけてみた。(読売新聞オンライン 旗本浩二)

バラエティー色の中にNHKの強みである教養ネタをちりばめた「ヘイ!モンジュ~迷えるわたしに教養を~」
バラエティー色の中にNHKの強みである教養ネタをちりばめた「ヘイ!モンジュ~迷えるわたしに教養を~」

ゴールデン・プライム帯に年50本規模

 「新しいNHKらしさ」は1月に発表された2021~23年度の経営計画で打ち出された。「受信料で成り立つ公共メディアとして、経営資源をNHKならではの多様で質の高いコンテンツの取材・制作に集中させ、正確、公平公正で、豊かな放送・サービスをいつでもどこでも最適な媒体を通じてお届けし続ける」ということらしい。これを具体化するのが今回の取り組みだ。

 NHKの番組開発とは、局内外から上がってきた企画を実際の放送枠で番組化し、最終的に新番組につなげるものだが、これまではせいぜい年に数本程度だった。それを今年度は「50本規模」と本数を明示。総合テレビのゴールデン・プライム帯(午後7~11時)と枠まで指定する力の入れようだ。今回の番組開発プロジェクトを統括する放送総局の有吉伸人特別主幹は、「テレビ編成の常識、固定観念を捨て、ジャンルにもこだわらずに公募した。公共放送の生命線の一つは多様性。新しい『NHKらしさ』も多様であるべきだし、正解はない」と説明する。

タクシーにカメラ、宇宙人目線でSDGs

 連休中に放送された第1弾の5本はどんなものだったか。

「トラブル救済!まさかのゾゾゾ…」は、ウエンツ瑛士が一般家庭を訪ねる趣向だった
「トラブル救済!まさかのゾゾゾ…」は、ウエンツ瑛士が一般家庭を訪ねる趣向だった

 「トラブル救済!まさかのゾゾゾ…」(4月29日午後7時30分)は、「トイレが爆発した謎」や「妻の親と同居する“マスオさん”を見舞う悲劇」など、身の回りで起こるトラブルと回避術を紹介。これまでならスタジオでのクイズ形式を取るが、今回は一般家庭にお邪魔したところがミソ。そこで家族3世代に回答者となってもらった点が新しさだという。

 「あのとき、タクシーに乗って」(5月3日午後7時30分)は、タクシーに固定カメラを設置し、運転手と乗客のやり取りに耳を傾けるドキュメンタリー。昨年、単発で放送された番組などを下敷きに「ドキュメント72時間」のディレクターが制作した。コロナ禍で勤務先のホテルを解雇されてタクシー業界に入った女性ドライバーがいるかと思えば、入社を翌日に控えた新社会人や、定年を迎えた同僚と共にほろ酔いの同期仲間たちなど、様々な人間模様が淡々と流れた。

 この後、午後8時から放送されたのが「みんなパスカる!」。ライブ動画配信サービスで知られる「SHOWROOM」の前田裕二社長や、ジャニーズWESTの小瀧望、乙葉らを回答者にしたクイズ番組だ。「時代のニーズに合ったこけしの工夫」や「長野・上高地の観光起爆剤」などを出題したが、単に正答を競い合うのでなく、そこに至る思考過程を提示、それを楽しんでもらおうと試みた。絵を描きながら会議の進行などを行うグラフィック・ファシリテーターも登場し、スタジオでにぎやかな議論が展開された。

 大がかりなセットを作り込んだのが「ヘイ!モンジュ~迷えるわたしに教養を~」(4日午後8時15分)。とある山寺に暮らす住職(秋山竜次)のもとに、瑛人、ぺこぱ、峯岸みなみらが人生相談に訪れ、仏像の“モンジュさま”が今後の道筋を示してくれるという趣向。見た目はバラエティーだが、恐竜巨大化の秘密に迫ったり、西洋絵画の興味深い鑑賞法を伝えたり、教養番組のエッセンスが盛り込まれた。

「いとしの地球アワー」は、宇宙人の目線からSDGsをわかりやすく伝えようと試みた
「いとしの地球アワー」は、宇宙人の目線からSDGsをわかりやすく伝えようと試みた

 5日放送の「いとしの地球アワー」(午後8時15分)は、SDGsをテーマにしたエンタメ番組。宇宙のある星で放送されている地球をテーマにした番組との設定で、前半は安田顕と壇蜜が宇宙人の司会を務め、後藤拓実と河北麻友子が地球人ゲストとして登場。飽食とフードロス、飢餓など食を巡る矛盾を指摘した。宇宙人目線の番組は以前にも「新銀河紀行~驚異の地球文明~」があるが、そこでの経験を生かした別企画だ。後半は、地球の深海にある「地球大法廷」が舞台。ミジンコ裁判長(薬師丸ひろ子)の前で、原告代理人(朝倉あき)がシマウマの体の変化は人類の責任である、と被告(近藤春菜)を糾弾した。

思考過程?演出意図伝わらず…着地にこじつけ感も

 番組の評価は見る人によって千差万別だし、年代によって興味の対象はバラバラだ。それを承知で言うなら、現在55歳の自分からすると、「タクシーに乗って」はすんなり受け入れられた。しかし、それ以外の番組の試みには疑問も残る。例えば「ゾゾゾ…」では、一般家庭を回答者に据えた理由にどんな効果があったのか?「パスカる!」では、肝心の“思考過程”が伝わってこなかったし、グラフィック・ファシリテーターも果たして必要だったのか?

「みんなパスカる!」で回答者となった前田裕二社長
「みんなパスカる!」で回答者となった前田裕二社長

 これらについて、有吉特別主幹は「演出の一つひとつがトライアル」と試行錯誤であることを強調。「フォーマットが既に決まっているものとは全く違う。視聴者の受け止め方が読めないものにもチャレンジしていく」とする。

 「モンジュ」は、NHKが得意とする教養情報を幅広く伝えるのが狙い。堤田健一郎チーフ・プロデューサー(CP)が語る。「これまでは科学や歴史など各取材班がそれぞれ番組を制作してきたが、1度放送するだけで終わってはもったいない。その面白さをより多くの人に楽しんでもらえる演出の工夫をしたかった」。ただ、恐竜も西洋絵画もそれが相談者に知恵を授けたのかどうか。何となくこじつけ感も否めない。堤田CPも「ぶっ飛んだ展開を楽しんでほしい反面、紹介した情報とお悩み解決の接着を工夫して納得感を磨いていければ」と課題を口にした。

 「地球アワー」は、前半冒頭の大食い紹介が長過ぎて着地点がなかなか見えなかった。水高満CPによると、SDGs自体は「NHKスペシャル」などで伝えてきたが、ややハードルが高いところがあったという。そこで「入り口から『SDGsを学びましょう』というスタイルは取らず、宇宙人から見て異様に思えるところから入って飽食と食糧不足にたどり着くストーリーにした」と明かす。「ただ、確かに(番組に)どこに連れて行かれるのか、しばらく分からないかもしれない」

タレント起用で「親しみやすさ」?

 NHKの番組でしばしば指摘されるのが、民放バラエティー的な演出の増加だ。お笑いタレントやアイドルが多く起用されることには「公共放送として必要な演出なのか」との声もある。「モンジュ」の出演者選びについて堤田CPは「教養番組に関心を示さない若い世代に届けたいとの思いがあり、演出面で親しみやすさや笑いを取り入れ、楽しんで家族で見てもらえるようにした」と語る。

 水高CPは「地球アワー」について、「お笑いタレントを出せばいいというのでなく、役を演じてもらう番組だったので、それに合う方にお願いした」とエンタメ性の確保を理由に挙げた。有吉特別主幹も「届かない人に見てもらう入り口を作り、少しでも伝えていくのが企画の一番の根っこにある。初めにタレントありきではない」と断言する。

現代の公共放送像、番組で提示を

運転手と乗客の一期一会を定点観測した「あのとき、タクシーに乗って」
運転手と乗客の一期一会を定点観測した「あのとき、タクシーに乗って」

 今回のプロジェクトには、普段の担当部署を超えてスタッフが集結。「モンジュ」には、大河ドラマや「ガッテン!」のプロデューサーも参加。秋山の出演部分は「LIFE!」などでコント番組を担当するディレクターが演出した。こうした横断的な番組制作はNHKでは珍しく、新しい化学反応も生まれそうだ。

 ただ、民放なら、実験的な番組は深夜帯でじっくり育ててから、ゴールデン・プライム帯に昇格させるのが定石だ。既存番組の枠内で新コーナーとして盛り込み、視聴者の反応を見る手法もある。要は慎重なのだ。その意味では、今回の取り組みは、国民が支払う潤沢な受信料収入に支えられたNHKにしかできないものと言える。しかし、それは果たして「新しいNHKらしさ」を届けてくれたのだろうか。有吉特別主幹は「その問いの答えを探す旅がずっと続く。いろいろな挑戦をして、それがどう受け止められたのか調査し、可能性を見つけていく。そのプロセスがようやく始まったところ」と話す。

 5番組を見るかぎり、「番組の多様性」と「視聴者層拡大に向けた多彩な演出」の2点が「新しいNHKらしさ」であると主張しているようにも思える。しかし、一方でそれは「現代の公共放送像」と呼べるものであるべきだろう。ネット社会の浸透で娯楽をはじめ時間の使い方が多様化し、テレビ離れも起きている昨今、NHKが進むべき道はどこなのか。今後の開発番組の中で具体的に示してほしい。(写真はNHK提供)

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2052498 0 エンタメ・文化 2021/05/16 10:03:00 2021/05/16 10:03:00 2021/05/16 10:03:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210514-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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