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「一生あざを隠し続けるのか」難病少年と父の姿、再生226万回…ドキュメンタリーの活路は配信に

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 NHKだけでなく、民放キー局も良質なドキュメンタリーを連打している。だが、おしなべて放送枠は深夜帯。見逃されているのが現実だ。時間帯変更の要望はあっても、ドラマやバラエティーのような高視聴率が望めないだけにいかんともしがたい。ところが、配信全盛時代となった今、フルバージョンから短縮版まで番組をネットに上げてみたところ、数十万~100万回超の再生回数を記録する作品が現れてきた。配信は民放ドキュメンタリーの救世主となるのだろうか。(読売新聞オンライン 旗本浩二)

4月からフェイスブックで始まった「Nドキュポケット」」
4月からフェイスブックで始まった「Nドキュポケット」」

深夜帯に集中、民放ドキュメンタリー枠

 民放もかつてはゴールデン・プライム帯(午後7~11時)に、「スーパーテレビ情報最前線」(日本テレビ系)、「驚きももの木20世紀」(テレビ朝日系)など硬派なドキュメンタリーを放送してきた。しかし視聴率が振るわず、2000年代以降、この時間帯からドキュメンタリー枠がほぼ消滅した。

 日中から夕方にかけての時間帯も、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」(日曜午後2時)や、TBS系「報道特集」(土曜午後5時30分)がある程度。これ以外は、日テレ系「NNNドキュメント’21」(日曜深夜0時55分)、テレ朝系「テレメンタリー2021」(関東は日曜午前4時30分)など、深夜から早朝にかけてしか純然たるドキュメンタリー枠は編成されていない。だが系列局とともに繰り出すこれらの作品群には定評があり、文化庁芸術祭など各賞で高く評価されている。

Nドキュ、FBに短縮版…老犬ホーム密着ルポは64万回再生

 「元々、深夜枠として出発していますから。日曜の最後、一週間の最後の番組という位置づけなんです」

6日の「Nドキュ」は、「『定点』から問い続ける ~雲仙普賢岳 大火砕流30年~」。大災害の教訓を考える
6日の「Nドキュ」は、「『定点』から問い続ける ~雲仙普賢岳 大火砕流30年~」。大災害の教訓を考える

 「Nドキュ」の有田泰紀チーフ・プロデューサーが語る。同番組は1970年にスタート。「NHKスペシャル」(89年~)の前身「NHK特集」(76~89年)よりも歴史は古い。日テレでは「キユーピー3分クッキング」(63年~)、「笑点」(66年~)に次ぐ長寿番組。系列局が制作し、国際エミー賞の受賞歴もある老舗枠だ。

 「家族と一緒でなく、一人でテレビを見る時間帯なので、視聴者が作品と静かに向き合えるとても貴重な枠。深夜帯なので視聴率に縛られることもないし、深夜だからできることもあり、むしろそこを意識して作っている」

 とはいえ、いくら秀作ぞろいでも見づらい時間帯であるのは否めない。当初は午後11時45分からのスタートだったが、徐々に開始時間が後退していった。視聴率は、90年代には4~5%で安定し、2001年2月放送の「多重人格の少女ヒロ」は過去最高の9・3%を記録した。だが、その後、徐々に数字が下がり、現在は2~3%。「もっと多くの人が見られる時間帯に放送して」との声はずっと寄せられており、今ではBS日テレが日曜午前8時に再放送枠を設けている。ほかにCS放送「日テレNEWS24」でも再放送が行われているが、多くの視聴者に見られている実感はないという。

 そんな中、注目すべき取り組みがネット配信だ。

「the SOCIAL×NNNドキュメント」は今も見ることができる
「the SOCIAL×NNNドキュメント」は今も見ることができる

 「Nドキュ」は、有料配信のHuluに提供されているが、それとは別に短縮版が無料配信されている。番組50周年を迎えるにあたり19年12月から始めたもので、当初は「the SOCIAL×NNNドキュメント」として数分程度にしたものをアップ。顔の皮膚の下の腫瘍があざのように見える難病を抱える少年の成長記「“あざと生きる”覚悟を問われた少年の夢」では、強い心を育もうと「一生、あざを隠し続けるのか」と父親が息子に問うたエピソードなどを伝え、再生回数226万回に達している。

 今年4月からは、同様の短縮版を「Nドキュポケット」としてフェイスブックにアップ。老犬介護ホームの密着ルポ「目を閉じる瞬間まで…老犬たちの最後の居場所」は、64万回再生されている。

「マスにも刺さる」…テレメンタリーは全編

日テレ制作の「Nドキュ」は、今年から短縮版がYouTube配信されている
日テレ制作の「Nドキュ」は、今年から短縮版がYouTube配信されている

 これには有田チーフ・プロデューサーも手応えを感じている。

 「若い人たちはスマホであまり長い動画を見ないので、まずは短くして流してみた。わずか3~5分程度のものだが、100万、200万回も再生され、実はドキュメンタリー自体に、少なからずニーズがあることがよく分かった。マスよりもコアなファンに刺さるとされてきたテレビドキュメンタリーだが、ネットにアップすることで、ある程度のマスにも刺さって受け入れられているようだ」

 さらに「Nドキュ」の中で日テレ制作の放送回に関しては、今年から短縮版のYouTube配信もスタートさせた。ただ、作り手からすれば全編を見てほしいのが本音だ。「短縮版に触れることでドキュメンタリーに興味を持ってもらい、最終的には地上波を見てもらえればいい。日曜の深夜枠にあぐらをかくことなく、放送以外でどうやって見ていただき、番組の存在を知ってもらうか。それを常に考えていかないといけない」

テレビ朝日系「テレメンタリー」は4月から全編をYouTubeにアップ。「先生、お産です。」は再生回数60万回を超えている=テレビ朝日提供
テレビ朝日系「テレメンタリー」は4月から全編をYouTubeにアップ。「先生、お産です。」は再生回数60万回を超えている=テレビ朝日提供

 YouTubeに関しては、「テレメンタリー」が今年4月から、系列局での放送終了後に全編をアップしている。このうち、1万8000人もの赤ちゃんを取り上げてきた老産科医の物語「先生、お産です。~産声守る75歳の産科医~」は、60万回超の再生回数となっており、ここでもドキュメンタリーが支持されるコンテンツであることを裏付けている。

視聴者が欲しがるニュースだけでなく、多様性を確保

 ただ、これで安心できるわけではない。ネットの世界では、自分に興味のあるニュースだけが配信される「フィルターバブル」が広がっており、短縮版にしろフルバージョンにしろ、いくら力作ドキュメンタリーを局側が配信しても、そのテーマに興味のないユーザーにはそもそも届かない。この点、有田チーフ・プロデューサーも特効薬を見いだせずにいる。「結局、視聴者が欲しがるニュースだけでなく、多様な考え方や切り口をラインアップすることが必要なのでは。ドキュメンタリーも多様性をより意識して制作していかないといけない」

13日の「Nドキュ」は「ぼくら、ディスレクシア ~読めなくても、書けなくても~」を放送。学習の多様化を訴える
13日の「Nドキュ」は「ぼくら、ディスレクシア ~読めなくても、書けなくても~」を放送。学習の多様化を訴える

 つまり時流に合わせ、柔軟な視点と自在な演出を取り入れていくのが肝要なのだろう。もちろん変えてはならないものもある。「Nドキュが51年前に始まった理由が『時代を記録する』ということ。この点は堅持したい。今で言えば、コロナの時代を他局や自局の他番組とは違う切り口でどう記録するか。そこは常に意識している」。それともう一つ、「人間臭さ、生活のにおいのする取材や番組作りは守っていきたい」。この点は深夜枠で培ってきたこの番組ならでは息吹だろう。

 テレビ離れだけでなく、ニュース自体に耳目を閉ざす人が増えつつあるネット社会で、ドキュメンタリストたちの模索は続く。

 (視聴率は関東地区、ビデオリサーチ調べ)

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2087800 0 エンタメ・文化 2021/05/30 10:40:00 2021/05/30 13:08:36 2021/05/30 13:08:36 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210527-OYT1I50105-T.jpg?type=thumbnail

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