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[週刊エンタメ]笑顔ではい上がる力 響け…“プロデューサー・明石家さんま” アニメ映画挑む

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 巧みな話術を武器に、約40年にわたりお笑い界の第一線を走る明石家さんま。歌手、俳優など多彩な顔を見せてきた才人は、近年プロデューサーとしても手腕を発揮している。新たに挑んだのは、西加奈子のベストセラー小説「漁港の肉子ちゃん」のアニメ映画化。公開に合わせて話を聞き、「プロデューサー・さんま」に迫った。(山田恵美)

米田育広撮影
米田育広撮影

 ものづくりを「寄せ鍋」に例える。プロデューサーは「土鍋とガスコンロを用意する係」らしい。「これぞ」という作品や人に出会うため、日頃から様々な分野へアンテナを張り巡らす。

 「ショートスリーパーなんですね。夜一人で起きてる時間に、ドラマや映画を見たり、本や漫画を読んだり。(情報収集が)癖になっているのは確かですね」

 西作品との出会いは5年ほど前。新大阪駅構内の書店で手にしたのが、直木賞受賞作「サラバ!」だった。開くと、こんなくだりが目に飛び込んできた。<「カワイイネ」「モウカリマッカ」「アカシヤサンマ」>

 「僕が出てくるのはここだけなんですが。大阪弁の使い方がうまい作家さんやな、と」。文章のリズムに魅せられ何冊も読むうち、「漁港の肉子ちゃん」にたどり着く。吉本興業の岡本昭彦社長にすぐさま連絡し、「映像化の権利を取ってくれ。俺が何らかの形にして残す」と宣言した。

 「肉子ちゃん」は38歳。「太っていて不細工」だが情に厚く、「普通が一番ええのやで!」が口癖だ。男にだまされ、小学生の娘キクコと大阪から北の港町に流れ着く。漁港の焼き肉店で働く母、娘の人情劇だ。

 実写映画やテレビドラマを模索したが、メインの2人にはまる女優、子役が見つからない。ならばアニメーションで表現しようと、「海獣の子供」などで知られる渡辺歩監督を迎えた。

 朗らかでめげない肉子ちゃんは、さんま自身を思わせる。「ひかれたのはそこやと思う。肉子ちゃんのポリシーね。生きる上での。どん底に突き落とされても、笑顔を浮かべてはい上がる」

 芸人としても俳優としても、「笑顔ではい上がる」キャラクターを多く演じてきた。永遠の憧れは、バッグス・バニーらが大騒ぎする米国アニメ「ルーニー・テューンズ」に登場する、ワイリー・コヨーテ。俊足のロード・ランナーを捕食しようと追いかけ回し、痛い目にあうが、あきらめない。不屈の精神の持ち主だ。

 1980年代の人気番組「オレたちひょうきん族」の「ブラックデビル」も、コヨーテがモデルという。ビートたけしふんする「タケちゃんマン」に泥の中へ幾度となく突き落とされ、笑いながらはい上がるキャラ。

 「これを見たプロデューサーの武敬子さんが、何をされても笑顔でいる男性はすてきだと、『男女7人夏物語』に起用してくれて。そんで、大竹(しのぶ)さんと出会うんですよ」

 「肉子ちゃんまで全部つながっているんです。好きなんやろなぁ」と笑いつつ、オチをつけた。「そんで結婚して離婚して。えぇ、はい上がれないところへ突き落とされましたけども」

「面白いか」問う姿勢 印象的…渡辺歩監督

 「ず作り手が面白いと思う事が大切」

 とても印象に残ったさんまさんの言葉です。手がけるものを「面白い」と思うのは、ものつくりにとって最も純粋な動機だと思ったからです。同時にそれは「面白い」のか?と問い続ける事だとも思いました。大変厳しい姿勢です。

 この言葉から、さんまさんのプロデューサーとしての覚悟を感じました。こう書くと、さも緊張感ある雰囲気がかもし出されますが実際は和気藹々あいあい、サービスのオープニングトークさながらにピロッと話されたと記憶しています。

 立て板に水のトークの中に創作のヒントがちりばめられ、自由な発想で熱を帯びてゆくアイデアの数々。

 10行足らずの会話にも細やかな作り込みを要求し、それに応える演者の皆さん。良いものを作りたい。人を喜ばせたい。その熱意がスタッフを動かしていました。最高のワクワクをくれる人、それがさんまプロデューサーなのです。

デコボコ母娘の人情劇 「漁港の肉子ちゃん」(公開中)

(c)2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
(c)2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会

 パワフルなおばちゃんの肉子と、美少女の娘キクコは、正反対のデコボコ親子。思春期を迎えたキクコは、母のことが少し恥ずかしい。2人には、ある秘密があった。肉子ちゃんの声を担当したのは大竹しのぶ。キクコの声は、木村拓哉と工藤静香の長女で、モデルやフルート奏者として活動するCocomi。

中村玉緒、滝沢カレン… 個性次々輝かせる

「Jimmy~アホみたいなホンマの話~」(Netflixで独占配信中)
「Jimmy~アホみたいなホンマの話~」(Netflixで独占配信中)

 初めて企画・プロデュースを手がけたのは、2018年のドラマ「Jimmy~アホみたいなホンマの話~」。ジミー大西の若き日々を、育ての親であるさんまとの関係を軸に描いた物語だ。

 演技に悩むジミー役・中尾明慶、さんま役・玉山鉄二の前で、ジミーと2人、脚本の掛け合いを実演してみせた。「オレらこんな感じや、と。『わかりませんよ!』って返されましたが」

 それ以前にさんまのプロデュース力を買っていたのが故・勝新太郎。妻で女優の中村玉緒が、「さんまのまんま」出演を機にバラエティーで大活躍するようになったためだ。さんまは、アドリブ的なやりとりで、中村の「天然系」の愉快さや「グフフ」笑いを引き出した。勝は、「玉緒をあんなふうに使うとは。アイツは日本一のプロデューサーだ」と舌を巻いたという。

 「踊る!さんま御殿!!」では、モデル・タレントの滝沢カレンらがブレイク。「出演者の実力。ひょっとしたら、自然とプロデュースしているのかも」。自ら輝き、人をも輝かせる。

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2118609 1 エンタメ・文化 2021/06/12 05:00:00 2021/06/12 20:44:54 2021/06/12 20:44:54 西加奈子さんの小説「漁港の肉子ちゃん」をアニメ化した同名映画を企画・プロデュースした明石家さんまさん。東京都港区で。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210611-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

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