読売新聞オンライン

メニュー

テレビ界、今アツいのは「個人視聴率」…主戦場も様変わり

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「個人視聴率」。

 かつてはお茶の間の中心にあり、一家だんらんの象徴だったテレビ。最近では、視聴率が20%を超える番組は年間でも数えるほどで、10%超えで喜ぶ関係者もいる。「テレビ離れ」で諦めムードなの? いえいえ、それは「世帯視聴率」の話。実は新しい指標「個人視聴率」獲得に向けて盛り上がっているのです。

チャンネル争奪戦 今は昔

 1970年代が舞台のアニメ「ちびまる子ちゃん」には、主人公のまる子が、家族と見たいテレビ番組を巡ってケンカをする場面がしばしば描かれる。一昔前の家庭内のもめ事と言えば、チャンネルの争奪戦だった。

 それから約半世紀。1家に1台だったテレビは、1部屋に1台にまで普及。録画機器の発達で、視聴者はリアルタイム視聴にこだわらなくなった。さらに、動画配信サービスを利用してテレビ番組を楽しむ人も増えた。

 つまり、どれだけの世帯が、その時間に、どの番組を見ているかという指標=世帯視聴率は、視聴実態を反映できなくなってきたのだ。

録画も集計 視聴の実態詳しく把握

 視聴率を調査・提供するビデオリサーチ(VR)社は、対象世帯に専用の測定器を設置したり、アンケートを実施したりして、視聴率を調査してきた。世帯視聴率の場合、例えば3人家族で2人がその番組を見ていたとしても「1世帯が見た」と集計される。一方、個人視聴率は、測定用リモコンに家族それぞれに割り振られたボタンがあり、視聴した人数や視聴者の性別、年齢、職業など、個人の属性まで把握できる。

 広告主側は長らく、個人視聴率の調査を求めてきた。VR社は97年から関東地区で個人視聴率の調査を始め、その後、関西地区、名古屋地区へと範囲を拡大。昨年3月にようやく、ほぼ全国で実施することになった。録画番組の視聴(タイムシフト視聴)も集計し、実態を精密に把握できる。一方、テレビ局も、VR社の視聴率とは別に、 TVerティーバー などの動画配信サービスの「見逃し配信」の再生回数などで、視聴者への広がりを分析している。

 NHKの紅白歌合戦や大河ドラマなど話題の番組の視聴率は、今も世帯視聴率で報道されるが、日本テレビをはじめ、テレビ局は既に個人視聴率を重視し始めている。分母が大きくなるため、世帯よりも個人の方が視聴率は低くなるが、局内などに掲示される視聴率は、個人の数字が大きく書かれている。

番組制作に反映

 TBSの編成部は昨年4月から、社内資料に世帯視聴率を載せることをやめた。福士洋通編成部長は「昭和の時代と違い、今は実態をつかめる個人視聴率が合っている。誰が番組を見ているかを無視するのはナンセンス」と話す。視聴人数だけでなく、職業や年齢などもわかるため、それらの情報を番組制作やターゲティング(ターゲットの絞り込み)に反映させやすい。

 20歳代女性が多く見る番組は、40歳代男性は――。営業をする側も受ける側も、視聴者の輪郭がぼやけていた世帯視聴率より、その姿がよく見える個人視聴率を重視するのは当然の流れだ。広告主が会員の「日本アドバタイザーズ協会」の小出誠常務理事は、「既に個人視聴率がベース。『これは自分の番組だ』と思える内容になれば、広告の効果も高くなる」と期待する。

 ただ、そもそも視聴率は、どの番組にCMを出すかの判断材料の一つで、番組の質まで決めるものではない。かつては「スイッチが入っているテレビを猫だけが見ているとしても、視聴率はカウントされる」という問題提起もあった。YouTubeや動画配信などテレビの競争相手が増えている中、個人視聴率を生かし、視聴者が没頭できる番組作りを期待したい。

[MEMO]広告の指標として活用

 視聴率が使われ始めたのは、1960年代。テレビが急速に普及し、広告媒体として注目され、その評価の目安が求められるようになったからだ。62年に民放などが出資して“第三者機関”の調査会社としてビデオ・リサーチ(当時)が設立された。

 歴代視聴率トップ10には、63年のNHK紅白歌合戦(81.4%)、64年の東京五輪女子バレー日本対ソ連戦(66.8%)など、60年代の番組が六つランクインしている。このほかプロレスやボクシングなどスポーツ中継が上位を占める一方、70年代以降には、「おしん」(62.9%)をはじめとするドラマや「8時だョ!全員集合」(50.5%)などバラエティー番組も増え、テレビが娯楽の王様だったことを示している。

 ただ、テレビの視聴率は漸減傾向にある。例えば、世帯視聴率が30%以上だった番組は95年は21本あったが、2020年は3本だけだった。一方で、個人視聴率の調査が始まったことで、例えば、連続ドラマ「半沢直樹」の最終回(21.5%)を「○万人が見ていた」と視聴人数を推計できるようになり、テレビ局は、番組の影響力を示しやすくなっている。(視聴率はいずれもVR社調べ、関東地区)

文化部 道下航

 文化部でテレビ、ラジオを主に担当。自宅の録画機器は、空き容量がいつもギリギリ。

無断転載・複製を禁じます
2120619 0 エンタメ・文化 2021/06/13 05:00:00 2021/06/13 10:02:42 2021/06/13 10:02:42 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210612-OYT1I50118-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)