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[アンテナ]「たとえ」の奥深さ 番組に新味…松田健次(放送作家)

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 まるで○○のよう、なんだか○○みたい、そんな「たとえ」の表現をテーマにしたのが、読売テレビ制作で6月10日放送の「クイズ!鼻からスイカ」(日本テレビ系)だ。昨年7月に関西ローカルで放送され、このほど全国ネットに初進出となった。

 番組タイトルの「鼻からスイカ」は、女性が出産する時の想像し難い痛みとして 巷間こうかん に伝わるたとえが冠された。

 様々な切り口のコーナーでたとえを紹介する中、一般人に「ファーストキス」のたとえを尋ねたコーナーに奥深さを感じる表現があった。中国人の30代同士の夫婦が高校時代にキスを経験した際、当時は学校からも両親からも恋愛禁止とされていた。ゆえにファーストキスには悪い事をしている罪悪感が伴い「万里の長城に行って落書きしているみたいな感じ」と表した。お国柄と内心が入り交じる妙味あるたとえだった。

 番組司会はお笑い芸人のフットボールアワー・後藤輝基と、タレントのA.B.C―Z・河合郁人。後藤は芸人の中でも「たとえツッコミ」の名手として知られる。今から10年前に「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)の企画で、女性芸人がプロのメイクで見違えるほど美しく変身した奇跡の写真を見て「高低差ありすぎて耳キーンなるわ!」と表現した。これはその後、たとえの名言として、各番組でたびたび引用されている。

 「たとえ=比喩」は古今東西、哲学でも文学でも、その絶妙さによって物事の理解を深めたり、ユニークさで笑いを醸したり、 辛辣しんらつ さで鋭い風刺になったりと、身近で奥深い表現方法だ。見事なたとえは、時を超えて語り継がれることもある。

 番組はまだ手探りの様子も見受けられたが、たとえの世界がバラエティーでどう料理されるか見入ってしまった。

 6月6日放送「15ビョーーーン」(テレビ東京系)は、15秒の面白動画というルールで、お笑い芸人による110本の動画を紹介した。

 玉石混交の動画には余韻を残す傑作もあり、2人組のパンプキンポテトフライは「こんな盆踊りは嫌だ」と題し、銃口を突き付けられた男が盆踊りをしながら画面を左から右へ横切るシーンを見せ、15秒という短い時間でシュールなサスペンスを描いた。

 今の時代、ユーチューブやティックトックなどスマホやネットで見られる動画サイトが広く浸透している。「15ビョーーーン」はその要素をテレビにちゃっかり拝借したとも言えるだろう。だがここで「15秒」という一つのルールを決めた事は大きい。もし番組が回を重ねれば、このフォーマットで 切磋琢磨せっさたくま が促され、15秒動画ならではの新たな笑いが生まれるだろう。

 「鼻からスイカ」「15ビョーーーン」。どちらも可能性の芽を感じる特番だった。

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2150584 1 エンタメ・文化 2021/06/24 05:00:00 2021/06/24 05:00:00 2021/06/24 05:00:00 松田健次さん(10月14日撮影)=吉田祐也撮影 ※11月12日付以降の「アンテナ」で使用する松田健次さんの写真を、こちらの近影に差し替えて下さい。顔写真加工をお願いします。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210623-OYT8I50134-T.jpg?type=thumbnail

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