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猿之助の代演続けた尾上右近、千秋楽でお兄さんはささやいてくれた「良かった」

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「やらせてもらって当然」それぐらいの気持ちじゃないとお客様に失礼

 月も おぼろ に白魚の  かがりかす む春の空 冷てぇ風もほろ酔いに 心持ち良くうかうかと――。

 つやっぽく、爽やかさもある高音の美声を劇場の隅々に響かせる。5月、東京・歌舞伎座で上演された人気演目「 三人吉三巴白浪さんにんきちさともえのしらなみ 」で右近は念願の主役、お嬢吉三を初役で勤めた。

田中秀敏撮影
田中秀敏撮影

 振り袖姿のかれんな娘は、実は女装した盗賊の吉三郎。首尾良く100両を奪った後、七五調で歌いあげるのは歌舞伎屈指の名ぜりふだ。曽祖父・六代目尾上菊五郎をはじめ、数々の名優が磨き上げてきた宝石のような言葉を今、自分が口にしている。「ありがたいと思う反面、『やらせてもらって当然』とも思い込んでいます。それぐらいの気持ちじゃないと歌舞伎座に来るお客様に失礼だから」

 右近は訪れたチャンスを確実にものにしてきた。例えば2017年秋に東京・新橋演舞場で上演された「スーパー歌舞伎 セカンド  ワンピース」。座頭・市川猿之助の肝いりで「若手公演」が設けられ、本公演で猿之助が演じる主人公ルフィと海賊女帝ハンコックの2役に 抜擢ばってき された。

 当初は全公演の5分の1程度に主演する予定だったが、猿之助が本公演の序盤で腕を骨折する事故に遭い、結果的に千秋楽まで2役を代演した。「必死でした。チャンスをくれた猿之助のお兄さんを悲しませないようにと思ったのが一番、大きかった。(朝、疲労で)起きられなくてベッドから出るのが1日の最大の仕事でした」

 千秋楽の舞台に猿之助が現れ、「良かった」と耳元でささやいてくれたことが、今も忘れられない。「『あそこで右近を抜擢した猿之助はすごかった』と言われる未来にしなくては。お兄さんが生きているうちに恩返しはしきれないので、下の誰かに『恩送り』をしたい」

田中秀敏撮影
田中秀敏撮影

清元宗家に生まれながら目指した“延寿俳優”

 女形、立役の双方をこなし、舞台にいるだけで自然に観客の目を きつける「華」の持ち主だ。「歌舞伎界のプリンス」と呼ばれることも多いが、父は歌舞伎役者ではない。

 歌舞伎音楽の一つ、清元の宗家に生まれ、三味線奏者になった兄の清元 斎寿さいじゅ に続き、太夫(語り手)になるよう期待をかけられてきた。

 3歳の時、六代目菊五郎の舞踊「鏡獅子」の映像を見て「これをやりたい」と直感で思った。やがて子役として歌舞伎の舞台に立つようになる。

 「最初は父(清元延寿太夫)も『楽しい思い出を作らせてあげよう』と思っていたはず」。ところが、本名「岡村研佑」は、12歳で菊五郎家ゆかりの「二代目尾上右近」を襲名し、どんどん役者業にのめり込んでいった。「僕は本気になってしまった。皮肉な親子関係の始まりでした」と振り返る。

 「すごく魅力的な『役者』というものに出合い、それができるのならやれるチャンスが欲しかった。もちろん清元は好きだし、大切なもの。子供の頃から『延寿太夫ではなく“延寿俳優”になりたい』と言っていた」

 そのチャンスが巡ってきた。歌舞伎の師匠である当代(七代目)菊五郎が「お前がやりたいのなら、やればいい」と「二刀流」を許してくれたのだ。18年に由緒ある太夫の名跡、清元栄寿太夫を七代目として襲名した。「一昔前なら、二足のわらじなどあり得なかった。やりたいことをやらせてもらえる時代に生まれたこと、周りの先輩に恵まれたことが、僕の財産です」

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2174966 0 エンタメ・文化 2021/07/03 05:00:00 2021/07/02 20:20:36 2021/07/02 20:20:36 歌舞伎俳優の尾上右近さん。東京・西麻布で。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210702-OYT1I50160-T.jpg?type=thumbnail

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