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「分からないからこそロマン」UFOから魔女狩りまでNHKがまじめに取り組む“闇世界”

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 「人狼」から「超能力」、果ては「ヒグマ襲撃事件」まで、大の大人がまじめに議論を繰り広げるNHK・BSプレミアム「ダークサイドミステリー」(木曜午後9時、再放送=火曜同11時45分)。超常現象に特化した前シリーズ「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」のファンを引き継ぎ、高齢視聴者の多い同チャンネルの中で、若年層に熱く支持されている。人気の秘密は、子ども時代の“わくわく感”を忘れない制作姿勢にあるようだ。(読売新聞オンライン 旗本浩二)

“怪しいもの”をどう見るか、そこから考える

 「子どもの頃から、矢追純一さんの番組とか『川口浩探検隊』とかが大好きで、そっちを見ていた視点からすると、ちょっと違う感じがしたんです」

 「幻解!」時代から番組を手掛けるNHK編成局コンテンツ開発センターの渡辺圭チーフ・プロデューサー(CP)が、およそ四半世紀前、オウム真理教による数々の事件が日本社会を震かんさせていた当時を振り返る。「エリートたちがどうしてオウムに引き寄せられたのか考えた時に、上司や周りのドキュメンタリストたちは『心の孤独』などを理由に挙げていた。でも、私としては宗教観とか今どきの若者といった概念でなく、そもそも“怪しいもの”をどう見るか、そこから考えるべきだと思ったんです」

 そこでUFOなども含め、オウム絡みで超常現象を扱う番組を提案したが、上司らの反応は鈍かった。「結局、『おまえはそれを信じてるの? 信じていないの?』って話になってしまった。そうじゃなくて、なぜ人はそういうものに幻想を抱き、はまっていってしまうのか、興味本位でなく人間の心理を扱う番組を作りたかったのですが、通用しなかった」

 その後、「その時歴史が動いた」「歴史秘話ヒストリア」などを担当。過去の事象をどう描くか、ノウハウを身に付ける中で、たとえ超常現象であっても、歴史番組同様、起きた事実を正確に捉え、追求していく手法を使えば、視聴者に受け入れられるのではないかと気付いた。

 そこで満を持して2013年に始めたのが「幻解!」だ。UFO、ネッシー、ビッグ・フット、ツチノコ……扱うテーマには、まさに昭和のお茶の間を席巻した怪しげな話題がずらり。当初は数本程度のつもりだったが、これが好評となり、超常現象をまじめに語る番組として定着した。

 19年からは超常現象以外に、歴史の闇と称されるような古今東西の事件や出来事も検証する「ダークサイド」へと移行。春から夏にかけての半期の放送ながら、「切り裂きジャックの謎」「三億円事件解決せず」「魔女狩りの恐怖」「今熱い!ゾンビ人気の秘密」など多彩に特集した。変化球として、異形の邪神が人類に恐怖をもたらす作品群「クトゥルー神話」で知られる米作家、H・P・ラヴクラフト(1890~1937年)が現代エンタメ界に与えた影響にも迫った。

ネタ選びは「わくわく、ドキドキ感」

7日には、様々な事件の背景として、まことしやかに語られる「陰謀論」検証を再放送する
7日には、様々な事件の背景として、まことしやかに語られる「陰謀論」検証を再放送する

 BSプレミアムのほかの番組と比べ、10~40代の視聴者が多いのが特徴だ。「ネタ選びで大切にしているのは、得体の知れないものに対して、子どもの頃から抱いているわくわく、ドキドキ感が湧き上がるかどうか。それらを伝える時も、事件の 顛末(てんまつ) を語って手品の種明かしをするだけなら夢もロマンもない。ちゃんと探って解き明かしていく面白さを忘れないように心がけています」

 最近では「北海道三毛別 ヒグマ襲撃事件の謎に迫る」(19年8月)、「八甲田山遭難事件 運命の100時間」(20年4月)、「笑顔が暴力を生んだ夜~なぜ人々はヒトラーに従ったのか?」(21年4月)などが、SNSで大きな話題となった。単なる超常現象ものと違い、こうした事件ものは、人間心理の奥深さや歴史背景の解説がモノをいう。そこで「ダークサイド」ではVTRと共に、専門家による解説部分を強化。それが功を奏し、予定調和を超えた思わぬ展開になることも。

 透視などの実験にまつわる1910年代の騒動を検証した「超能力の謎を解明せよ!~千里眼事件の光と闇~」(21年4月)はその好例だ。「千里眼事件なんてフェイクでしかないと思ってゲスト2人に話をしてもらったんですが、『あの実験自体が本当だとは言い切れないけど、詐欺とかフェイクであるという証拠もない』との発言が出た。そんな話、台本にないんですよ」。スタッフは慌てたが、「そのほうが面白いから」とそのまま進行した。

後味が悪ければ悪いほど面白い

 ゲスト2人の見解はこうだった。

 「科学の検証システムで考えれば、千里眼の存在はいまだに立証されていない。ただ『だから、ない』とも言えない」(一柳廣孝・横浜国大教授)。

「陰謀論」では、ハトは政府の監視ドローンであるとの説まで飛び出した
「陰謀論」では、ハトは政府の監視ドローンであるとの説まで飛び出した

 「未知のものを証明できなかったけれど、メディアコンテンツとして注目されたことのほうが大きい。事件自体は物語性が強いが、我々は物語を消費しながら生きている。その意味では楽しませていただいた」(井山弘幸・新潟大フェロー)

 このあたりの感覚が「ダークサイド」の真骨頂だ。渡辺CPが言い切る。「科学で解明できると思った瞬間にロマンがなくなる。分からないからこそ調べたい。そこにロマンを感じるんです。それで分からないのなら、まだまだ未知の領域があるということ。人間の心理なんて特にそう。だから『テレビ業界で唯一、許されている後味の悪い番組』だとスタッフの間では言い合ってます。でも後味が悪ければ悪いほど面白い番組なのでは?」

個々の事象から見えてくる時代性

9日は、フランス革命時の処刑人・サンソン(イメージ)の苦悩を追う
9日は、フランス革命時の処刑人・サンソン(イメージ)の苦悩を追う

 今月9日には、「美しき処刑人が見たフランス革命 なぜ理想は恐怖に変わったのか?」と題し、ルイ十六世やマリー・アントワネットら2700人をギロチンにかけた処刑人・サンソンの苦悩を追いながら、革命時に市民が暴走した闇を描く。その後、20世紀最大の魔術師と言われたクロウリーに迫る16日の放送回で今期はいったん終了。仕込み期間に入る。

 来期は何を取り上げてくれるか楽しみだが、渡辺CPは、個々の事象を時代の中で 俯瞰(ふかん) する新たな試みも提案する。「例えば、19世紀末から20世紀初頭の科学って、めちゃくちゃ面白くて、X線などの最新科学が心霊現象や宗教の研究にもつながり、混然一体となっていた。まさに千里眼事件の時代ですよ。あの時代を掘り下げたら面白い」

 まるで子どものように目を輝かせる渡辺CP。数年前には自ら英国のネス湖に足を運び、ネッシーなんていないと分かっていながら暗い湖面に目を凝らし続けたという。その衝動に共感できる大人も多いだろう。

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2338591 0 エンタメ・文化 2021/09/05 10:04:00 2021/09/28 14:53:33 2021/09/28 14:53:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210901-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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