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3日放送のTBS系「世界遺産」(日曜午後6時)では、約1年にわたって取材した日本有数の聖地・高野山の四季を紹介。国宝である高野山最古の多宝塔内部を初めて8K撮影するなど、高精細カメラを駆使した貴重な映像もふんだんに登場する。とりわけ、照明を凝らして浮かび上がるきらびやかな天井画など、肉眼で見える現実を超えた、もう一つの「現実」は衝撃的だ。(読売新聞オンライン 旗本浩二)

TBS「世界遺産」が長期取材
今春、放送25周年を迎えた「世界遺産」では、コロナ禍以前から4K・8Kによる国内長期取材に取り組んできた。これまでに京都・比叡山、北海道・知床半島を撮影し、今回はそれに続く企画だ。高野山は、2004年に世界遺産登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成遺産の一つ。空海が816年に創建した真言密教の山岳修行道場・金剛峯寺を中心とする霊場で、標高約900メートルの山上の盆地に117の寺院が密集する。
6地区に分かれ、
番組が8Kカメラで撮影したものの中で注目は、世界遺産構成資産である金剛三昧院・多宝塔と、伽藍にある西塔だ。
多宝塔の五智如来像、初の8K撮影
金剛三昧院は、1211年、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝の

地上波はハイビジョン放送(2K)だが、4Kでは縦×横の総画素数が約4倍、8Kで約16倍となり、それだけ解像度の高い、きめ細やかな映像となる。番組ではそれらを2Kに変換するが、4K・8Kで収録している分、通常よりきれいな映像を楽しめるという。取材にあたったTBSスパークルの田口亮ディレクターによると、特に8Kカメラを使うことで、通常では捉えきれない臨場感や空気感を再現できる。
多宝塔内部は薄暗く、800年近い時をへた仏像は
西塔内部は「あえて照明をどんと当て」

同じく通常は非公開となっている西塔の撮影ではコンセプトをがらりと変えた。西塔は、伽藍に
映像では、天井に描かれた草花の模様など美しいデザインがくっきりと捉えられていた。もちろん照明がなければ暗くて見えないし、たとえ照明を当てていても撮影時には肉眼で判然としなかったものだという。つまり、人間の目を超えた「高精細カメラと照明ならではの“現実”」(堤慶太プロデューサー)が浮かび上がったのだ。
コロナ禍でも「思う存分やらせてもらった」

8Kカメラでは、ほかに紅葉や雪景色、満開の桜なども昨年11月から約1年を費やして撮影。コロナ禍で海外はもちろん、国内の世界遺産も取材が容易でない中での長期取材に田口ディレクターは「久しぶりに一つのものに集中して、今まで以上にどう表現するかチームでアイデアを出し合い、時間をかけて撮っていった。試行錯誤すること自体、なかなかできない中で、思う存分やらせてもらった」とテレビマンとして満足そうだ。
せっかくの美しい映像なので、できれば8K放送で見たいが、現状、8K放送はNHKがBSで行っているのみ。ただ、4K放送は民放BSも取り組んでおり、番組は12月にBS-TBSで4K放送される予定だ。
チューナー内蔵型テレビなどBSでの4K・8K放送対応機器は8月末時点で、累計1000万台を突破。高精細映像への視聴者ニーズは高まっており、見ごたえのある番組の充実が放送局にとって急務だ。その意味でも今回の長期取材の成果は注目を集めそうだ。(写真はTBS提供)