ステイホーム、でも「おうちは全員にとって安全じゃないよ」…DV被害女性ら支援

RINAさん 音楽バンド「SCANDAL」

 チョコレート色のサテン地に、白色のパイピングのアクセントが利いたシンプルなパジャマ。首元裏側、控えめにメッセージがある。「売り上げはサポートが必要な女性や家庭環境で生活されている方々を支援する団体に寄付されます」。(文化部 池内亜希)

富永健太郎撮影
    りな  1991年、奈良県生まれ。2006年にバンド「SCANDAL」を結成し、08年にメジャーデビュー。ドラムス、ボーカルを務める。9月に新曲「one  more time」を出した。11月には、結成15周年記念のライブの模様を収めたブルーレイ、DVDを発売予定。

パジャマなど返礼、クラウドファンディングで援助募る

RINAさんらが手がけたパジャマやキャンドル

 「MAKE A WISH DAISY PROJECT」と名付けられた活動は、昨年、RINAさんが、友人でモデルのSeinaさんと始めた。最初に手がけたのが、このパジャマの制作。「緊張感ある伝え方が必要な場面も当然ある。でも私たちは、軽やかな入り口でありたくて。日常に気軽に取り入れられて、おしゃれで。かつ、支援を思い出せるものをと」

 パジャマなどを返礼にし、クラウドファンディングで支援を募ると、昨年12月からの1か月半で、700万円以上が集まった。今年8月、女性に対する家庭内暴力(DV)被害者やシングルマザー、ファーザーらを支援する2団体に材料費などを省く約129万円を寄付。以降も、オンラインサイトで、オリジナルのTシャツなどを販売してきた。

 Seinaさんとは、よく通っていたビンテージファッションの店を通して知り合った。洋服の趣味など似ているところも多く、意気投合。カフェでおしゃべりをしたり、買い物をしたりと、週一で会う仲になり、互いに、家庭環境に悩んできたことを知った。「自分と同じような境遇の人たちに、何かできるようになれたらいいね」。そんな思いもたびたび話していた頃、コロナ禍に見舞われた。

 「『家にいて』と号令がかかったけど、おうちは全員にとって安全じゃないよって思ったんです。ウイルスとは違う危険もある。普通に生きてきたら、そんなことは思い付きもしないんだと改めて気付いた」と、RINAさんは昨春を思い返す。同じ思いだったSeinaさん。2人は「何かするなら、今だ」と決意した。

「なんでうちだけずっとぐちゃぐちゃなの」一人で闘っていた子どもの頃

富永健太郎撮影

 母子家庭で、5人きょうだいの長女として育った。母は再婚したが、相手の男性との関係で、メンタルを傷つけた。母の姿を見るのがつらかった。「どうしたら守ってあげられるんだろう。母をハッピーにしたい」。いつもそう思っていた。15歳で憧れだった音楽活動を始めた。しかし、仕事中、母からの電話で心が乱れ、自身の気持ちを平静に保つのも精いっぱいという時もあった。当然、ライブに来てくれる余裕もなかった。

 高校2年で夢をかなえ、デビューのために上京。きょうだいは号泣し、「自分だけが逃げた」と罪悪感を抱いた。「絶対に成功して家族に返す」と腹をくくり、金銭面などで家族を支え続けてきた。「もちろんやりたい仕事で、バンドが好きで楽しくて。ただ、家族のことがあるから止まらずにやってこられたなとも思う」と優しく笑う。

 「なんでうちだけずっとぐちゃぐちゃなの」と悩みながら、誰にも相談できず、一人で闘っていた子供の頃を思い返す。「あの時、こういう家庭もあるよって、その一言でも、好きなミュージシャンが発信してくれたら、どれだけ救われたんだろうって思うんです」

 音楽と関係ないことを発信することに葛藤もあった。だが、SNSでアーティストとの距離が近くなった今だから、寄り添えるのではないかとも感じた。加えて、30歳前後を迎えた頃から、バンドのファンたちとの関係性に変化が生まれていたことも一つの理由になった。

 SCANDALは3年前、所属するレコード会社内に、独自の音楽レーベルを発足。より主体性の高い活動を進めている。「こんなことに悩んでるって、ファンのみんなに言えるようになったと言いますか。ネガティブな面も出しながら、人間として音楽作りができるようになっている感覚がある。ファンのみんなも、私たちを一人の人間として言葉を発してくれている気がする」。こうした温かな応援を肌身に感じ、今ならできるとも思えた。「『実は私も』というファンレターももらった。そういう問題を初めて知ったという人にも接した。伝わっていることを実感する」と力を込める。

「この3人だから…ソロだったら絶対に無理」

富永健太郎撮影

 今月3日、東京・お台場のライブハウス。SCANDALは、ロック色の強い楽曲やダンサブルな楽曲などを次々と、格好良くもキュートに披露していった。そこには、メンバーに囲まれ、力強くドラムをたたくRINAさんの姿があった。結成から15年。3人は状況を理解し、そっと支えてきてくれた。今回の活動も心から応援してくれる。居心地のいい場所が、ここにある。「この3人といると、もう、いつもドキドキできて、楽しくて。人間としての相性がいいんですよね。この3人だから、15年やってこられた。ソロだったら絶対に無理でした」

 ずっとコンプレックスだった家庭環境だが、最近になり、少しずつ受け入れられるようになってきたという。経験があるからこそ、気付ける思いや問題がある。まだ決して、大きいとは言えない支援だが、前に進んでいる手応えも感じている。「今も、こんな状況ずっと続くの?と苦しんでいる人がいるはず。一人じゃないよと思ってもらえるよう、息の長い活動を続けたい」

「誰も否定せずに、自分も好きに生きる」

 RINAさんに、私生活での好みなどを聞いた。

――ドラムの魅力

富永健太郎撮影

 自分の気持ちがサウンドに表れるところ。機嫌が悪いと楽しい音は出ないんですよ。やり始めて、自分に合ってるなって知りました。

――大切にしている言葉

 「誰も否定せずに、自分も好きに生きる」。音楽活動で、これをずっと大事にしています。4人が気持ちよく好きなことをしようという気持ちですね。

――リフレッシュ法

 スリリングなちょっと怖い映画やアニメを見ること。奇妙で不思議な感じの怖さが好き。

――好きなファッション

ビンテージを取り入れます。ヨーロッパのものが多い。部屋のインテリアもアンティーク調が多く、のみの市で購入したものも。

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