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[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「日本酒」。
アルコール離れにコロナ禍が追い打ちとなり出荷量の低下に苦しむ日本酒が、業界を挙げて復権の動きを模索している。実は輸出総額は右肩上がりで、2020年は11年連続で過去最高額を更新した。世界に通用する「SAKE」ブランドを強化するため、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録を目指す動きも広がる。
アルコール離れにコロナ追い打ち
日本酒造組合中央会によると日本酒出荷量のピークは1973年度の177万キロ・リットル。だが2020年度は、4分の1以下の41万キロ・リットルに低迷した。
ビールや発泡酒などに押されただけではない。1990年代初めのバブル崩壊以降、大人数による社内旅行や宴会が減り、アルコール自体の消費が落ちた。国内最大の酒所の兵庫・灘が、大きな被害を受けた95年の阪神大震災も大きく影響した。
業界の構造転換や地酒ブームもあり、純米酒や吟醸酒など高級な日本酒の出荷量は堅調に伸びた。だがコロナ禍で、日本酒をじっくり味わえる居酒屋が休業を迫られた。単価を上げることで、消費量の減少を補う戦略もコロナ禍で苦戦を強いられている。
輸出額は伸び
一方、海外向けに目を移すと、2020年の輸出額は対前年比3%増の約241億円。10年の85億円から3倍近くに伸びた。農林水産省によると、海外の日本食レストランの数は、06年の2万4000店から21年は15万9000店に増加。日本で酒の味を覚えた海外の観光客が、自国の日本食レストランで日本酒を楽しむ好循環も生まれた。
海外の販路拡大に直接取り組む蔵元もある。神奈川県海老名市の泉橋酒造は、英語や中国語、韓国語でホームページを作り、アジアから欧州まで10か国以上と取引ができた。コロナ禍で家にこもって暮らす世界の人々の「イエノミ」需要を開拓した。
