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昨年、半年ほどかけて小型の国語辞典を通読した。コロナ禍の在宅時間に何かまとまったことを、と思い立った。初めて見る語や意味が次々と現れる。新聞記者は言葉を扱う仕事なのに、辞書のことをあまり知らない……。少々反省しつつ、多彩な辞書をひもとくと、それぞれに日本語と懸命に向き合い、格闘する世界が見えてきた。(編集委員 伊藤剛寛)
各社が考え抜いた語釈


辞書編集部を舞台にした小説「舟を編む」(三浦しをん著、光文社)が本屋大賞を受賞して今年で10年。今も読み継がれる同書に、「島」の語釈を談じるシーンがある。
主人公の同僚はかつて、「海にぽっかり浮かんでいるもの」と答えて叱られた。それでは「クジラの背中」も「島」になってしまう。
言われると難しい。辞書には各社が考え抜いた語釈が書かれている。
広辞苑には、「周囲が水によって囲まれた小陸地」「ある限られた地域」「沖縄で、自分の生まれ暮らす地域」などが載る。
明鏡国語辞典には「会社などで、グループごとの机のかたまり」という記述がある。新明解国語辞典には「特に、東京兜町を指して言うこともある」とも。辞書はどれも同じではなく、きらりと光る個性がある。











広辞苑の前の版には「沖縄で――」の語釈はない。「改訂で沖縄関連の言葉を増やす方針を立てた」(岩波書店辞典編集部)。同じ辞書も、改訂を重ねて常に進化している。
日本語学者で、タレントのサンキュータツオさんに主な辞書の特徴などについて聞いた。