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新語の採用・別の表現も紹介…機動力生きる小型辞書
小型辞書の中で、岩波国語辞典は、最もまじめな学級委員長タイプ。最近の用法や俗っぽい言葉は、知っていながらあえて入れないみたいなところがある。ただ、最新版では新しい用法も増え、社交性のある委員長という感じになりました。
三省堂は、三省堂国語辞典、新明解国語辞典という人気の2冊を出しています。もともと「明解国語辞典」という辞書があって、携わっていた2人の編者が、方針の違いから別の辞書を作り、今もその流れが続いています。
三省堂国語辞典は、新語に非常に強い。街を歩いたり、新聞などをチェックしたりして集めた用例を、積極的に辞書にフィードバックする。序文や凡例の説明は「です・ます」調。子どもにもやさしい辞書です。「水」の説明も、水素と酸素の配合は後にし、まず「自然界に多くあり、われわれの生活になくてはならない、すき通ったつめたい液体」。仲のよい友だちのような辞書ですね。
対して、新明解は言葉の説明に重きを置いた辞書です。「公僕」を引くと、「(権力を行使するのではなく)国民に奉仕する者としての公務員の称(ただし実情は、理想とは程遠い)」。項目数は少なくなりますが、説明は丁寧です。地方から出てきたワイルドな秀才のようなイメージ。ただ、改訂を重ね、とがり過ぎた表現を修正するなど、ワイルドがマイルドになってきました。
明鏡国語辞典は、国語辞典としては後発の参入ですが、様々な工夫をしています。「優秀な人」「独身の人」といった「な」と「の」の使い分けを詳述するなど文法項目が充実。改まった場面で使える類語を「品格」欄で示し、画数の多い漢字は拡大して表記してくれる。すばらしい辞書です。クラスに溶け込もうと頑張っている優秀な転校生という感じでしょうか。
百科語の要素を、何とか小型辞書に入れようと挑戦したのが集英社国語辞典。クラスにいる雑学王みたいな辞書で、もっと注目されてもいいと思います。
新選国語辞典は、白衣を着た理系メガネくんのイメージ。巻末にグラフがあり、収録語の分類を示しています。名詞が80%以上で、形容詞は1%に過ぎない。日本語は少ない形容詞でやり繰りしている。「やばい」がいい意味で使われるようになったのも理解できます。「円滑」を間違って「えんこつ」で引く人のために見出しを立てるなど使い勝手もいい。
学研現代新国語辞典と旺文社国語辞典は、学生の絶大な支持を得ています。
学研は、「雨」の項目のそばに、「五月雨」「にわか雨」といった関連語をまとめて紹介し、新しい言葉を知ることが出来る。宿題を手伝ってくれるクラスメートかな。
旺文社は、改訂も多く、時代の
書く人が表現に迷ったときに役立つのが、ベネッセ表現読解国語辞典。細かなニュアンスやシチュエーションを設定して、これを表現できる語を紹介しています。「心配」の項目のそばには、「何かが起こりそうで」、「気が気でない」「気をもむ」など、「今後のことを考えて」、「いても立ってもいられない」「気苦労が絶えない」など。おしゃべりな相談相手です。
最後に、50万項目を誇る日本国語大辞典。普通の家にはないと思います。様々な分野の専門家が集結して作った最高峰。国家事業レベルの仕事を民間の会社が行ったというのも驚き。学校で例えると校長先生です。
辞書は改訂される度によくなります。時々「親の代から同じ辞書を使っている」という話を美談として聞くことがありますが、それは危ない。今の言葉や、使い方が載っていません。最新版が最高傑作です。ぜひ新しい辞書を手にとってください。