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「なんで、私が東大に!?」という予備校の広告はよく見かけるが、「なんで、東大卒でポーカーを!?」と聞かれる人は、そういない。10年前、日本人で初めて世界最高峰の「ワールド・シリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)」を制した木原直哉プロ(40)。今年も5月31日に米国ラスベガスで開幕するWSOPに参戦する。一体、どんな中高生時代を過ごしてきた人なのか。(読売中高生新聞)
ポーカーは頭脳ゲーム、ギャンブルとの違い

「小・中学での将来の夢は学校の先生、高校では物理や数学の研究者を目指していました。当時の自分から見れば、『なんで、私がポーカープロに!?』です(笑)。
ちなみに、ポーカーはトランプを使った頭脳ゲームです。互いの手札がわからない中、対戦相手の考えを読む洞察力・論理的思考力に加え、どんどん変わる状況への対応力・判断力も求められます。運頼みのギャンブルとは違います。

1回の対戦なら運も大きな要素ですが、10万回も繰り返せば、実力に応じた勝敗数におおむね収まります。そこに、ポーカーを職業とする余地があります。5年たてば半数以上がやめる、入れ替わりの激しい仕事ですが」
異次元のチーターを目の当たりに

厳しい実力の世界で生きる木原さんは、小1で珠算を始めて中2で6段に達し、暗算も8段に。どれほどすごいのか想像しにくいが、そういう暗算力・計算力あっての世界制覇だったのだろうか。
「有利にはなりますが、必須ではありません。単純化して、『3桁の数字を15個足す計算』を頭の中で11秒で終えるのが暗算8段、10秒なら9段、9秒で最高位の10段と考えてください。
ところが中学生のとき、全国レベルの大会で『3桁15個』を3秒で答える人を目の当たりにしました。人間がチーターに短距離走を挑むくらい、異次元の世界です。とてもかなわない。以来、本当の得意分野を見つけて、そこで努力を重ねることが大事なんだと、子ども心に考えるようになりました。
自分の能力を問われて思い浮かぶのは“確率の感覚”です。ポーカーでは、場に出ているカードや自分の手札から、有利・不利の確率を直感する力が大切です。
小5の1月、自宅で購読していた新聞の紙面にセンター試験(現・大学入学共通テスト)の問題が例年同様に載り、それを解こうとしても大半の問題は当然わかりません。でも、数学の『確率・場合の数』の問題だけすべて正解でした。偶然かもしれませんが(笑)」