言葉あるところ、新語・用例求めどこまでも…[辞書を開く]<3>

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 辞書作りに欠かせないのが「用例採集」だ。言葉の変化や新語の実例を集め、また、これまでどう使われてきたのかを調べる。対象は文献、メディア、そして街角の表示など多岐にわたる。用例採集の実際とは――。(編集委員 伊藤剛寛)

言葉は暮らしの大事な「道具」、手入れ具合を比べてみた半世紀前…[辞書を開く]<6>

魚にも「ほほ」?…築地にて確認

用例採集をする飯間さん。仕事の帰りなどに探すパターンと、エリアを決めて集中的に探すパターンがあるという(東京・築地で)=鈴木竜三撮影
用例採集をする飯間さん。仕事の帰りなどに探すパターンと、エリアを決めて集中的に探すパターンがあるという(東京・築地で)=鈴木竜三撮影

 東京の築地場外市場。三省堂国語辞典の編集委員・飯間浩明さん(54)がカメラを手に歩く。街角での用例採集だ。マグロの部位を説明した飲食店の看板に「ほほ肉」の文字がある。「ほほという言葉は、魚にも使うことが確認できます」。「醤油」「正油」といった、「しょうゆ」の漢字表記なども記録した。

 飯間さんは、用例採集の第一人者として知られる。

 「辞書の改訂作業の柱となるのが、新しい言葉を加えることです」

 では、その言葉はどうやって集めるか。基本的には書き言葉だという。新聞や雑誌、小説などに新しい言葉が次々と現れる。例えば、ロシアのウクライナ侵攻で用いられた「人道回廊」。「定着するかどうかはわかりませんが、記録は必要です」

 放送もチェックする。ある時テレビで、「○○に行きたい人は、△△駅で降りがち」という例を耳にした。「~がち」は、「遅れがち」など望ましくない場合に使っていたが、単に「することが多い」という意味の用法が広がっている。

ネットとリアル、集めて貯めて収録へ

 さらに、インターネットの言葉を把握しないと今の日本語は捉えられない。「尊い」(アイドルなどが魅力的)、「香ばしい」(言動がおかしい)は、今年刊行された最新版に収録した。

 「ただ、それだけだと生の言葉に触れている感じがしない。そこで街に繰り出して、言葉を観察するんです」。飲食店で見かけるようになった「旬菜・旬彩」(旬の食材)などがこれまでの成果だ。

 用例はできるだけ多く集め、パソコンに保存する。「用法が10年くらい続き、相当の例が集まれば、収録を検討します」と飯間さん。

 最新版には3500語を加えた。「香害」(強い香りによる害)、「はずい」(俗語で、恥ずかしい)、「黙食」(会話をせずに食事をすること)――。用例を集めた数万の言葉から選んだ結果という。

車を入れる建物がなくても「入庫」?
車を入れる建物がなくても「入庫」?

やってみた、身近な言葉探し

 自宅周辺を歩き、用例採集のまねごとをしてみた。

 屋根などがない平置きの駐車場に「入庫待ち禁止」の表示=写真=。辞書で「入庫」を引くと、「自動車などが車庫へはいること……」。次に「車庫」を引くと、「自動車などを入れておく建物」。建物がなくても「入庫」と言うようだ。飯間さんは「辞書の記述を検討しなければならないかもしれませんね」。

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3092174 0 エンタメ・文化 2022/06/21 15:00:00 2022/06/21 15:00:00 2022/06/21 15:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/06/20220616-OYT8I50087-T.jpg?type=thumbnail

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