欲や嫉妬を逆転発想で描く…作家の今村翔吾さん「葛籠」を語る

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 直木賞作家の今村翔吾さんが読者と語り合う「よみうり読書サロン 今村翔吾夏の陣」が7月18日、大阪市北区のギャラリーよみうりで開かれた。今村さんは本紙朝刊(6月12日付)に掲載された書き下ろし掌編小説「 葛籠つづら 」や、ワゴン車で全国の書店や学校を巡る活動「まつり旅」などについて、会場からの質問に熱っぽく答えた。(司会=文化部・真崎隆文)

※当日の模様は8月31日まで専用サイトで視聴できます。申し込みは こちら

あらすじ  ある村に住む老夫婦が、突如現れた美女・雀子を家に泊めて面倒を見るようになった。夫は雀子を気に入り、養女に迎えようとするが、妻の与根は家が乗っ取られることを恐れ、雀子の舌を はさみ で切って追い出してしまう。
 雀子を探しに出た夫はある日、財宝が詰まった葛籠をもらって帰ってくる。与根も葛籠欲しさに雀子を訪ねると、二つの葛籠が示された。善人が空ければ金銀が出て、悪人が空ければ首を切られる「 正魂せいこん 」の葛籠と、その逆になる「 反魂はんこん 」の葛籠。自分は善人か、悪人か。究極の二者択一を経て、与根は夫の過去を知る。

 いまむら・しょうご 1984年、京都府生まれ。ダンスインストラクター、埋蔵文化財調査員を経て、2017年に「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」でデビュー。20年には「八本目の槍」で吉川英治文学新人賞、「じんかん」で山田風太郎賞を受賞。今年、「塞王の楯」で直木賞を受けた。
 いまむら・しょうご 1984年、京都府生まれ。ダンスインストラクター、埋蔵文化財調査員を経て、2017年に「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」でデビュー。20年には「八本目の槍」で吉川英治文学新人賞、「じんかん」で山田風太郎賞を受賞。今年、「塞王の楯」で直木賞を受けた。

 ――「葛籠」は、舌切り すずめ を下敷きにした妖しい作品でした。どのような発想から生まれたのでしょうか。

 「原稿用紙9枚で書くという依頼だったから、既存の話があったほうが余計な説明を省ける。作品では『人間の業』を描きたかったので、それ以外の舞台設定は、みなさんの頭の中の予備知識をお借りして、短いセンテンスで心に巣くう欲や嫉妬を表現しました。下敷きのあるものを逆転の発想で変えていくのは、得意と言えば得意ですね」

 ――歴史小説と通じる部分もありますか。

 「あるある。歴史小説は一応、史実の部分は変えられない。信長は本能寺で死ぬ。だけど、その経緯で分かっていないところは、自由に描ける。おとぎ話も、桃太郎が鬼ヶ島に来て鬼を退治することは決まってる。それを守りながら、いかに変えていくか。リメイクは面白い。絶対にやると決めてるのは今村版・西遊記。3、4年後に始めて、10巻くらいのシリーズにしたい」

 ――読者から事前に募った質問には、後半の雀子と与根の心理戦に関して、「雀子の魂胆は 復讐ふくしゅう で、与根はどちらの葛籠を選んでも首が飛んだのでは」というものがありました。

 「両方が わな だった可能性もゼロではない。ただ、片っぽは無事に終わる葛籠だったと思ってます。救いがある中で、本人に絶望を選ばせた時の方が復讐を達成した感覚が強いはずなので」

 ――昔話では善人のおじいさんを悪人にした意図を尋ねる質問もありました。

 「雀子の親がなぶり殺されるのをおじいさんが(幼少時に)見ていたことは、いいことではないけど、果たして罪なのか。雀子の恨みは強いけど、止められない人間を悪人と言ってしまっていいのか。雀子にとっての個人的な悪と、社会的な悪には差異がある。今の時代は、みんなで寄ってたかって個人的な悪を社会的な悪に変える風潮が顕著になっていて、そういう風刺も入れてますね」

  会場の参加者  自分を善人だと思って葛籠を選ぶ人はいるでしょうか。

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3232286 0 エンタメ・文化 2022/08/06 08:00:00 2022/08/06 08:20:27 2022/08/06 08:20:27 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/08/20220804-OYT8I50000-T.jpg?type=thumbnail

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