「読売Bizフォーラム東京」ソーシャル・イノベーションの旗手たちvol.2 講演要旨
「『甲州ワイン』で世界と勝負する~地域の未来を見据えて」(講師:三澤彩奈氏)

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 日本ワインの故郷と言われる山梨県勝沼で、生家が営む中央葡萄酒(株)でワイン醸造家として活躍する、三澤彩奈さんが1月23日、東京・大手町の読売新聞社で「読売Bizフォーラム東京」の講演を行った。「ソーシャル・イノベーションの旗手たち」シリーズの2回目。大手町の夜景を見下ろす32階のレセプションルームを会場に、前半は講演、後半は三澤さんが手がける「グレイスワイン」のテイスティングイベントが行われた。

「Small is Beautiful」、家族経営の良さを大切に

 1923年に創業した家族経営のワイナリーで、栽培、醸造の責任者をしています。
 銀行家時代に、神戸に勤めていた3代目にあたる祖父が、53年に実家に戻り、「グレイスワイン」と名付けました。グレイスという名の通り、品格のあるワインを造ろうとつけた名前です。

 82年に父が家業へ戻り、89年にワイナリーを継いでいます。父も商社で10年間勤めた経験があり、グローバルな視点を持ちながらワイン造りを進めてきました。
 私は2007年に留学から戻り、ワインの栽培と醸造を担当しています。都会で働いた経験はなく、技術者あがりです。

 山梨の勝沼町は、家族経営のワイナリーが多いのが特徴です。地元のワイナリーの後継者を小学生の時から知っているというのも珍しくありません。
 祖父や父が都会の大企業から山梨の家業に戻ってきたのは、ここに都会の華やかな生活にはない、何か意義、意味があるからだと思います。その意義を証明したいと思っています。

 大切にしている言葉は、「Small is Beautiful」です。大量生産にはない良さを大切にして、ワイン造りの中で表現していきたいと思っています。

ワインに適した日本固有の品種「甲州」

 祖父や父が人生をかけた品種が「甲州」です。
 ワインに適した「ヴィティス=ヴィニフェラ」に属した、南コーカサス発祥のブドウです。DNA解析で、中国大陸を通り日本にたどり着いたことがわかっています。1000年以上前に、恐らく仏教とともに日本に渡り、日本固有のブドウ品種になったのでしょう。
 私も大好きな美しい薄紫色の果皮をしたブドウです。日本的で、淡く、控えめな色です。
 どのようなワインになるのでしょうか?
 グレープフルーツやユズのような柑橘の香りがあると言われますが、ブドウが熟してくると、白桃や洋ナシの香りが感じられます。

 きりっとした酸味があり、アルコールは11~12%と控えめであり、繊細でエレガント。味わいはユニークな特徴を持ちます。

 甲州は、ヨーロッパのレストランでも喜ばれています。すしや天ぷらなどの和食だけでなく、オイスターや白身魚のカルパッチョなどともペアリングされています。

 世界に挑戦、勝負するために、2009年にKOJ(Koshu of Japan)を山梨のワイナリーで結成しました。産地形成に繋がるような世界的な知名度を上げようと、高い志を持って、ロンドンを中心にプロモーション活動をしています。ロンドンは、世界のワイン情報の70%を発信している重要な市場です。
 日本には、約300社のワイナリーがあり、うち81社が山梨に位置します。北海道から九州まで、全国でワインが造られていますが、山梨と北海道は、ワイン産地としてラベルに記載する地理的表示が認められています。
 輸出を通じて、私が一番学んだことは、1社ではできないことが多いということです。ライバル同士が手を取り、より大きな目標に向かう精神を学ばせていただいたと思います。

※KOJ(Koshu of Japan)とは
 日本のワイン生産地である山梨県内のワイン生産者15社と甲州市商工会、甲府商工会議所、山梨県ワイン酒造協同組合によって2009年7月8日に設立された団体。日本を代表する「甲州」の品質向上をはかり、世界市場において認知を向上させ、適切なマーケットプレイスを獲得することを目的としている。

2019年のトップ10ワインに選ばれたスパークリング

 昨年末、通信社ブルームバーグで2019年のトップ10ワインが発表されました。選者は、アメリカのワイン評論家エリン・マッコイさんでした。私たちのスパークリングワインがその世界トップ10の1本に選ばれたのです。

 ――エリン・マッコイさんのトップ10のワインに選ばれた感想は?

 非常にびっくりしました。Grace Blanc de Blancsは、遊び心で造り始めたワインです。自社農園のブドウから瓶内で2次発酵させるため、手間はかかりますが、発酵の様子は今でも神秘的に感じられます。尊敬するラフィットロートシルトなどと一緒に選ばれて感慨深かったです。

 ――昨年はテレビ番組「グランメゾン東京」のロケ地にもなりましたね。

 脚本家が弊社のワインを飲んでくださっているとお聞きしました。父との共著「日本のワインで奇跡を起こす」(ダイヤモンド社)も読んでくださったそうで、台本を拝読したとき「あれ、当ワイナリーのことが書かれている」と驚きました。
 弊社の醸造所の扉には「世界一のワインを造る」と書いた紙が貼られています。監督がそれをご覧になり、気に入ってくださったようで、ドラマの一場面でも使われたという裏話があります。

 ――海外のワイナリーで武者修行して学んだことは

 ワイン造りは、秋の3ヶ月間に仕事が集中します。日本での作業が終わってから、南半球でもう一回ワイン造りができます。6年間、日本のオフシーズンを利用してチリやアルゼンチン、オーストラリア、南アフリカなどで修業をしました。誰も知らない所に行く不安もありましたし、夜間作業など体力面でも大変な思いをしたことはありました。
 しかし、海外で働く中で、「日本のワインの魅力は何か?」「自分のアイデンティティーは何か?」を考えられたこともまた良い機会でした。

 そして、日本人として、器用さ、集中力、繊細さなどの強みがあることに気がつきました。甲州と自分自身を重ねたこともありました。おとなしいけど、それだけじゃないものを持っているという共通点があると思ったのです。その魅力を掘り下げ、日本人だからこそ造れるワインを目指そうと思いました。

 ――ロンドンの市場にあえて挑戦した理由は

 ロンドンへの輸出は、父が先頭に立って行ったことです。父の大学の先輩で、著名な醸造コンサルタントだった麻井宇介さんの「ロンドン市場を目指さなければいけない」という言葉が常に父の心に残っていたと聞いています。

地域のワイナリーが協力して世界に認められるワインを作りたい

 ――地域活性化で必要なことは

 1人だけ、1社だけで、有名になることは、ワインの世界ではありえません。ボルドーワイン、ブルゴーニュワインと同じように、山梨のワイン、勝沼ワインとして世界で認められるように、他社と協力して、地域一帯で努力していきたいと思います。
 ブランド力を高めるには、マーケティングが必要だと言われていますが、良いものを作ることこそが何よりのマーケティングで、マーケティングに踊らされてはいけないと思っています。

 ――良いものを作るために大切にしていることは

 オーナーの父と話し合い、職場や地域の仲間と支え合い、醸造家として本物を目指しています。10年以上もの熟成にたえられるワインを造って、皆さんから信頼される日本ワインにしていきたいと思います。

 テイスティングイベントで提供したワインのリストと合わせた料理

 白  グレイス甲州2018    ごま豆腐 木の芽味噌添え
 ロゼ グレイスロゼ2018    錦糸砧巻き
 赤  あけの2017       筑前煮

グレイス甲州2018
グレイス甲州2018
グレイスロゼ2018
グレイスロゼ2018
あけの2017
あけの2017

講演者プロフィル

三澤彩奈氏(みさわ・あやな)
ワイン醸造家

 1923年山梨で創業、中央葡萄酒グレイスワイン4代目社主の長女として、幼い頃よりワイン造りに親しむ。ボルドー大学醸造学部DUAD卒業。フランス栽培醸造上級技術者取得。ステレンボッシュ大学院にてブドウの生理学コース修了後、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンのワイナリーで研鑽を積む。2008年より、グレイスワイン栽培醸造責任者。2014年、世界最大のワインコンクール「Decanter World Wine Awards」にて、日本ワイン初の金賞を受賞。著書に『日本のワインで奇跡を起こす 山梨のブドウ「甲州」が世界の頂点をつかむまで』(ダイヤモンド社)。読売新聞山梨版で『ワイン歳時記』を連載中、ショップチャンネルのテレビコマーシャルにも出演している。
 中央葡萄酒株式会社ホームページ https://www.grace-wine.com/

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1113336 0 読売Biz フォーラム 2020/03/17 15:26:00 2020/03/17 15:26:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200304-OYT8I50052-T.jpg?type=thumbnail

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