本郷和人・東大史料編纂所教授インタビュー「疫病と日本人 長い歴史上の闘い」

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 新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、「第2波」か否かが議論されるなど、感染症の影響は当分収まりそうにない。しかし、長い歴史を振り返ってみれば、日本人は天然痘や赤痢、マラリア、コレラ、インフルエンザなど、多くの疫病と闘い、それを克服してきた。特に疫病による改元が相次いだ中世史が専門で、テレビ番組でも人気の東京大学史料編纂所の本郷和人教授が、8月27日に東京・大手町の読売新聞東京本社で「疫病の日本史」と題した講演を行うのを前に、歴史から見る「疫病との向き合い方」について聞いた。(聞き手 調査研究本部主任研究員 多葉田 聡)

 ――今回の新型コロナウイルス感染症で、約100年前のスペイン風邪の大流行が改めて注目されていますが。

本郷和人さん
本郷和人さん

 「スペイン風邪の時は、インフルエンザウイルスの存在自体が分かっていなかった。当時から、近くに寄らない、手を洗う、うがいをするという対策が取られたが、今も日本人は同じ事をやっている。そういう人間の叡智というのは、なかなか捨てたものではない。現代のわれわれは、大正時代にはウイルスという概念自体なかったと、過去を笑うかもしれないが、今から50~60年たったら、(当時は)すぐにワクチンを作れなかったと笑われるかもしれない」

 ――日本史を振り返ってみても多くの疫病が流行し、先生が専門の中世には、疫病や災害が原因で、元号を変える「改元」が頻繁に行われました。

 「かつては、人間の力ではどうにもならない天災とか社会不安、政情不安があると、改元が行われた。政治と祭祀が密接に関係していると、天災や疫病があった時、(人々の不満が高まり)政権が倒れてしまう。そのため、政治と祭祀を分離して、改元をして気分を変えるという意味合いがあった」

 ――しかし、ヨーロッパで黒死病と恐れられたペストのように、日本では大流行しなかった疫病もあります。

イラストはイメージです
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 「日本はずっと病気と闘っているが、ペストは本格的には入って来なかった。ひと言でいえば、海で隔てられていたからだ。モンゴル帝国は日本を2回攻めてきたが、陸続きでヨーロッパとつながっていたため、ペストで滅びてしまった。ペストによって、ヨーロッパの人口の3分の1から4分の1が亡くなったと言われているが、そのペストが中国大陸までやってきて、国が一つ滅びている。それなのに、日本に本格的に上陸しなかったというのは、海の存在が、いかに大きいかを示している」

 ――歴史と病気の関係を、どう考えたらよいのでしょうか。

 「人口学の立場から言えば、人口が増えない原因は飢饉、疫病、戦争の三つ。日本の人口は、速水融先生(歴史人口学)によれば、紀元600年で600万人。それが、1000年後の1600年にどれくらいになったかというと、1200万人で、1000年で600万人しか増えていない。ところが、江戸時代になると、1700年までの100年で2500万人に増加、つまり倍以上になっている。江戸時代というのは、現代の我々から見ると住みにくかったかもしれないが、当時の人からすると、生きやすい時代だった。それはなぜかと言うと、戦争がなくなり、飢餓からある程度解放されたということもあるが、病気に対しての対処ができるようになった。戦国時代に医学が発達し、専門医はそれでご飯が食べられるようにもなった」

 ――江戸時代になって、ようやく病気に対処できるようになり、人々が現代に近い生活を送れるようになったということですか。

 「江戸時代になって良い事ばかりだったかと言うと、そうでもない。梅毒はコロンブスがアメリカ大陸からヨーロッパに持ち帰ったと言われ、日本にも伝えられてしまった。江戸時代に大流行した。東京で遺跡調査をしている方によると、東京の墓地には大きな特徴が二つある。一つは子供の死亡率が高く、子供の骨がたくさん出土する。天然痘はもちろん、現代に比べ、衛生状態が悪いので、多くの子供が亡くなった。もう一つの特徴は梅毒患者の遺骨。骨が黒ずむので、分かるという」

 ――歴史をふまえ、我々は新型コロナウイルスにどう向き合えばよいのでしょうか。

イラストはイメージです
イラストはイメージです

 「科学が進化すれば、人生はバラ色なのかと言えば、そんな事はないということは、多くの人が分かっている。コロナ対策を考える際、理系の学者だけでなく、経済の専門家や哲学の学者なども入れて、もっと地に足のついた議論をすべき」

講師プロフィル

本郷和人氏(ほんごう・かずと)
東京大学史料編纂所教授

 1960年、東京都生まれ。東京大学文学部卒。専門は日本中世史・古文書学。著書に『中世朝廷訴訟の研究』『新・中世王権論』『天皇はなぜ生き残ったか』『戦国武将の明暗』『天皇はなぜ万世一系なのか』『天皇の思想』『天皇にとって退位とは何か』など多数。大河ドラマ「平清盛」時代考証やAKB48のファンとしても著名。

【開催概要】
タイトル疫病の日本史
講  師本郷和人氏(東京大学史料編纂所教授)
日  時2020年8月27日(木)19時~20時30分(開場 18時30分)
会  場 読売新聞ビル3階「新聞教室」(千代田区大手町1-7-1)
※「会場受講」参加者のみが対象です
プログラム (1)本郷氏による講演(60分)
(2)質疑応答(30分)
※司会:多葉田聡(読売新聞東京本社 調査研究本部 主任研究員)
受講料 会場受講:3,300円(税込み)
※講師サイン本プレゼントあり
オンライン受講:1,100円(税込み)
※講師サイン本プレゼントなし
※視聴用URLは当日(27日)に、メールにてお知らせします。
申し込み 「会場受講」は こちらから
「オンライン受講」は こちらから
定  員 会場受講:30名(先着順)
オンライン受講:50名(先着順)
主  催一般社団法人 読売調査研究機構
後  援読売新聞社

※本企画では、会場の定員を通常の4割に抑え、十分なソーシャルディスタンスを確保するとともに、安全な受講環境を整えています。

※お申し込みは先着順です。定員に達し次第、受付終了となります。
※サイン本プレゼント(1人1冊)は、会場受講のみの特典です。
※オンライン配信のための視聴URLは、メールにてお送りした後、運営上の都合で再送信する場合があります。その際は、視聴URLが変わっていることもありますので、ご注意下さい。
※申し込み・お支払いはチケットプラットフォームPeatixで行っていただきます。現金でのご対応はいたしておりません。
※お申し込み後のキャンセルや払い戻し、ご参加いただけなかった場合の事後の払い戻しは、原則いたしておりません。
※企画内容、時間などは予告なく変更になる場合があります。
※講師の急病や天災、その他のやむを得ない不可抗力の事態が生じた場合には、当日でも講座を中止することがあります。また、その他の要因による中止または延期の可能性もあります。
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1394771 0 読売Biz フォーラム 2020/08/07 13:00:00 2020/08/07 13:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200806-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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