『会社四季報 業界地図』編集長が展望 「2021年 伸びる業界、落ちる業界」
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2021年は不穏な年明けとなった。新型コロナの収束のメドは見えぬまま、政府は緊急事態宣言の再発令を余儀なくされ、延期された東京オリンピックの開催にも不透明感が漂う。
長期化する事態は、企業や業界の見取り図も大きく変えている。それまで好況を
伸びる業界(1) eコマース

eコマースは、コロナ禍による外出自粛が追い風となる業界の代表格だ。2020年7月~9月の楽天の国内EC流通総額は前年同期比で12%伸びている。「Yahoo!ショッピング」などZホールディングスのeコマース取扱高も同期間で前年比3割増となった。勢いは当面続くだろう。
経済産業省の調べによると、現在の日本のEC化率(すべての商取引流通規模に対する、電子商取引流通規模の割合)は6%と、米国の10%や英国の20%に比べて低いとされる。しかし新型コロナを契機として、業界からは「一気に20%まで高まるのではないか」(楽天の三木谷浩史会長兼社長)といった強気の声が出ている。
これまでECで買うものは、本やゲーム、AV機器が主流だった。しかし、今後は市場のより大きな日用品、食品分野へのEC普及が期待される。スーパーなどの人混みに混じらなくてすむ上、足腰の弱まった高齢者層の間でも利用が加速すると考えられる。
国内eコマース業界の中心は楽天、Zホールディングスなどショッピングモール大手。だが昨今はカナダのショッピファイなど、複数の決済手段に対応した自社ECサイトを安価に構築するためのサービスも広がっている。出店企業が「脱モール」化し、独自のECサイトを構築する新たな流れについても注目だ。
伸びる業界(2) 倉庫・物流
eコマース市場の拡大につれて、倉庫・物流業界の活況も予想される。国土交通省によると、2020年4月以降の宅配便の荷物数は、前年を1割ほど上回った状況が続いている。「佐川急便」などのSGホールディングスは2021年3月期に過去最高益を更新する見通しだ。ヤマトホールディングスも2021年3月期は大幅な増益を予想している。

物流需要の拡大を受けて、モノの保管・配送拠点である物流施設の供給増も起きる。すでに日本の倉庫面積はここ数年、年間平均で約10万m2ずつ拡大してきたが、そのトレンドはまだ止まらないだろう。物流施設業界は従来、三菱倉庫や三井倉庫など旧財閥系の伝統企業が中心を担ってきたが、外資系物流会社や生命保険などの参入も増えている。異業種の競争によって、市場のさらなる活性化が予想される。
伸びる業界(3) 電子部品・半導体製造装置
電子部品はコロナ後に期待されるデジタルイノベーションの恩恵を受ける分野だ。自動車の電動化や、5Gやテレワークの普及によって、ネットワークに関連する電子部品の需要が拡大するだろう。
しかも、日本のお家芸としてのポジションは顕在だ。世界の電子情報産業の生産金額に占める日系企業のシェアは、AV機器で3割、ディスプレーや半導体ではたった1割の一方、電子部品では4割を占める(電子情報技術産業協会、2018年見込み)。世界的にも有力な日本の電子部品メーカーには世界中から投資マネーが集まっている。村田製作所や日本電産といった代表企業の株価は歴史的な高水準に達している。
半導体も、電子部品と同様に5Gの普及や、テレワーク浸透などのデジタル化需要を
落ちる業界(1) 地方銀行

「安定」「堅実」のイメージもあって就職人気のある地方銀行だが、事業環境はそれとは正反対の
そんな状況に、コロナ禍が追い打ちをかけている。企業の資金繰り支援のための貸出増はある一方で、企業の倒産リスクが高まっている。貸倒引当金など企業の倒産に備えた与信費用はすでに上昇の兆しを見せており、2021年はさらに高まることが予想される。
地銀間の合併、買収などの再編もさらに加速しそうだ。政府は以前から「地銀の数が多すぎる」ことを問題視してきた。再編が加速すれば、重複した拠点や余剰人員などのコスト圧縮が一段と行われるだろう。
落ちる業界(2) アパレル
外出自粛や在宅勤務の流れを受けて、ビジネススーツやおしゃれ着の衣服の需要が減少している。オンワードホールディングスやワールドといった百貨店内で展開するアパレル大手に加え、青山商事やコナカなどの紳士服チェーン大手も軒並み今年度は営業赤字に落ち込む見通しだ。信用調査会社帝国データバンクによると、新形コロナを契機とするアパレル業界の倒産は、飲食店、ホテル・旅館業に次いで多い。2021年も多くのアパレル企業が危機に陥るのは免れない。その一方で、近所への買い物や散歩、部屋着などのカジュアル衣服への需要はむしろ拡大しており、それらの商品を強みとする企業は堅調だ。その代表格は「ユニクロ」「GU」を展開するファーストリテイリングや、しまむらである。生活スタイルの変貌に合わせて、アパレルの業界構図も一変しそうだ。
落ちる業界(3) 空運

エアラインは需要の蒸発状態が続いている。空運ビジネスは、人件費や機材関連費などの固定費が重いため、売上が落ちると大きな赤字に結びつきやすい。ANAホールディングス、日本航空(JAL)の国内大手2社の営業利益は、2021年3月期に数千億円の巨額赤字に転落する見通しだ。両社は国内・国際線の減便や設備投資圧縮、公募増資などを行って目先の資金繰りに躍起となっている。新規採用活動も凍結している。
空運会社の経営危機、倒産は国内外で相次いでいる。2020年11月には国内線のLCC(格安航空会社)エアアジア・ジャパンが経営破綻した。航空業界の予測によると、世界旅客需要がコロナ禍前の2019年の水準にもどるのは、早くても2023年だと見られている。この回復予想は、テレワークの浸透など、人と人との接触機会の減少いかんによっては、さらに遠のく可能性もある。

苦しい業界はこれだけではない。飲食産業、レジャー施設やホテル、イベント産業などもコロナ禍が直撃する。長期的には日本の“お家芸”と言われてきた自動車産業も、世界各国が進める脱炭素化や、EVシフトによって権勢を維持できるかが問われている。ただ、苦境に立つ業界がある一方で、活況を呈する業界があることにも注目したい。
著者プロフィル
西澤佑介(にしざわ・ゆうすけ)
『会社四季報 業界地図』編集長
1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社などの担当記者、『週刊東洋経済』編集部などを経て2019年10月より現職
1月29日講座 開催概要
タイトル |
『会社四季報 業界地図』×読売新聞「就活ON!」
自分に合った企業はこう探す! 『会社四季報 業界地図』編集長が語る徹底研究講座 |
講 師 |
西澤佑介氏(『会社四季報 業界地図』編集長)
中山一貴氏(『会社四季報 業界地図』副編集長) |
開催日時 | 2021年1月29日(金) 19時~20時30分 |
開催方法 | オンライン配信(Microsoft Teams ライブイベントを利用します) |
内 容 |
(1)ミニ講演:日本経済と企業を取り巻く現状(予定)
(2)西澤編集長&中山副編集長によるトークセッション (3)Q&A |
参加料金 | 無料 |
定 員 | 100名(定員に達し次第終了します) |
申 込 | こちらから |
主 催 |
株式会社東洋経済新報社
一般社団法人 読売調査研究機構 |
後 援 | 読売新聞社 |
※昨年Peatixにおいて発生した不正アクセス事象およびパスワードの再設定方法については以下をご参照ください。
<不正アクセス事象について>
<パスワードの再設定方法について>
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視聴方法について
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参加者には、当日までに視聴URLをメールでお送りします。
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PCではブラウザからご参加いただけますが、スマホからはTeamsアプリのダウンロードが必要となります。
詳しくは、こちら(Teams ライブイベントへの参加方法)をご覧ください。
『会社四季報 業界地図』とは

累計発行部数180万部超、10年連続売上No.1の、業界研究本のスタンダードと言われています。業界・企業取材に長けた『会社四季報』の記者が毎号、全ページを更新し、シェアや提携関係、勢力図、トレンド、注目企業などを直感的にわかりやすく図解しています。就活生の業界研究、投資家の銘柄選び、ビジネスパーソンの顧客開拓・深耕など、様々に活用されています。
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