[現代×文芸 名著60]言葉を楽しむ<18>帰郷で重なる記憶と歴史…『模範郷』リービ英雄著
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思えば不思議なことだ。
リービ英雄は英語を母語とするアメリカ人で、中国語は日常会話レベル。私は中国語を母語とする台湾人で、英語はボロボロ。そんな彼が書いた小説を、私が読んでいる。私
『模範郷』は、帰郷の物語だ。帰郷時の感情を、中国語の「
それにしても、五十年ぶりの帰郷とは――三十年にも満たない私の人生と比べれば、あまりにも壮大な話だ。著者は一九五〇年代後半、六歳から十歳の間、大日本帝国が台湾で残した日本人村「模範郷」に住んでいたが、両親の離婚でその地を離れた。二〇一三年、知人の手紙を機に、彼は半世紀ぶりの帰郷を決意する。
「
昨今、歴史に向き合おうとせず早々に忘れ去りたいと願う人が多い中、歴史がもたらした巨大な断裂の余波、その渦中に私達は今でもいるということを、本書の読者なら心得るに違いない。 (