[現代×文芸 名著60]社会と接する<44>少年少女 体制への挑戦…『ソロモンの偽証』 宮部みゆき著

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◎2012年刊、現在は新潮文庫(全6巻)。
◎2012年刊、現在は新潮文庫(全6巻)。

 作中に登場する印象的な絵画がある。ブリューゲルの『絞首台の上のカササギ』だ。小高い丘でピクニックを楽しむ人々を、絞首台の上から、“密告者”を意味するカササギが見下ろしている。異端審問や魔女狩りが激しかった時代、無辜むこの人民が、無惨に処刑された世相を表しているという。

[現代×文芸 名著60]全作品リンク集

 時代が変わっても、人間のやることは本質的に変わらない。ある体制を作り、その中で“迫害”したりされたりする。当事者は、体制に異を唱えるのも難しい。

 物語はバブル末期、1990年のクリスマスイブの夜に、一人の中学生が、学校の屋上より転落死するところから始まる。彼の死は自殺とされるが、生徒や保護者の間で、あるうわさささやかれる――彼は同級生に殺されたのではないか。

 学校も警察も噂を否定するが、関係者たちのもとへ、彼が殺される現場を見たという告発状が届く。マスコミがその告発状を嗅ぎつけ、事態が混迷を窮めるなか、同級生から、もう一人の犠牲者が出てしまう。

 学校や警察、報道機関はそれぞれの正義に立ち、子供たちを必死に守ろうとするが、真相は一向に見えてこない。肝心の生徒たちは心に傷を負ったまま、半年が過ぎ、学校はまるで事件などなかったかのように平穏を取り繕おうとする。

 ないがしろにされ、傷ついたままの少年少女たちは、自分たちの手で真相を究明するため、「学校内裁判」を開くことを決意する。

 それは安易な体制への批判や大人への反抗ではない。自分たちが負った傷や自分たちを取りまく体制に正面から向き合い、乗り越えようとする、体当たりの挑戦なのだ。

 中学生の少年少女たちの魂の叫びが飛び交う法廷で、驚くべき真相が明らかになる……。平成を代表するミステリー作家による傑作長編。(澤西祐典・作家)

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