[現代×文芸 名著60]生命を感じる<53>街と少女 成長の痛み…『しろいろの街の、その骨の体温の』村田沙耶香著
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家庭や学校から職場まで、村田作品は常に日常空間に揺さぶりをかける。
本作の舞台は高度経済成長期の象徴「ニュータウン」。郊外の森を切り崩しながら「どんどん姿を変えるこの街に、うまく親しみを感じられずにい」る谷沢結佳の小学生と中学生時代が2部構成で描かれる。
小学生の結佳は仲良し3人組の一員として「子供っぽい」遊びに参加しながらも、
中学2年になると、結佳の身体はそれまで「生き物のように成長し続け」ていた街と同様に成長を止める。小学生時代の仲良し3人組は教室のヒエラルキーのなかでそれぞれ違う位置に収まる。結佳は攻撃されにくい「地味で真面目な女の子」役に徹するが、それでも心ない言葉の波に自尊心を傷つけられている。
傷だらけの少年少女たちの前で大人たちは無力だ。親も教師も彼らを救える言葉を持ち合わせていない。母は「ハンバーグにコーン入れる? 小さい頃好きだったわよね」と無邪気に尋ね、街の発展に
結佳の唯一の救いは伊吹と学外で過ごす時間。だが、まわりを気にして、人気者の伊吹と向き合えずに「おもちゃ」扱いし続ける。結佳が「教室を支配する大きな力」から解放され、自分の言葉を獲得するまでの戦いは過酷なものがある。
ここではSNSが普及する前の世界が描かれているが、学校から24時間逃れられない現代の少年少女も、職場に束縛されている社会人も、結佳の成長物語に救いを