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読書委員が選ぶ「2020年の3冊」<下>

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 「本よみうり堂」では、読書委員20人が毎月400冊を超える新刊本に目を通します。書評すべきだと思う本は全員で回覧して議論、検討した上で紹介しています。今年の新刊の中から「これは!」と思った3冊を挙げてもらいました。

木内 昇(作家)

〈1〉絲山秋子著『御社のチャラ男』(講談社、1800円)

〈2〉ミシェル・クオ著『パトリックと本を読む』(白水社、2600円 神田由布子訳)

〈3〉浅田次郎著『流人道中記』(中央公論新社、上下各1700円)

 〈1〉すべての働く人に読んでほしい、と強く思った深奥な小説。かつ、どうやったらこんな風に書けるの? とおののいた一作。傑作だらけの著者が打ち立てた、新たな金字塔。〈2〉本を読むこと、学ぶことの大切さを、そして、どんな環境にあっても人生を諦めないことの尊さを、改めて教わったノンフィクション。〈3〉流人、青山玄蕃にいざなわれ、共に奥州街道を旅したような感覚を得る。曲者くせものの彼に、徐々に魅入られていく道行きだった。

篠田 英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)

〈1〉押谷仁ほか著『ウイルスVS人類』(文春新書、800円)

〈2〉竹中治堅著『コロナ危機の政治』(中公新書、980円)

〈3〉坂元茂樹著『侮ってはならない中国』(信山社新書、880円)

 〈1〉新型コロナに世界が揺れた。日本では押谷仁教授ら優れた感染症の専門家たちが奮闘している。彼らは何を考えているのか。国民一人一人がもう少し知ったほうがいい。〈2〉専門家たちに比べて、政治は混乱状況を見せ続け、課題が露呈した。〈3〉国際政治では中国の超大国としての台頭が著しい。冷静かつ戦略的な視野に立った中国との付き合い方への模索は続く。まずは信頼できる国際法学者の本で知識を備えることが必須だ。

山内 志朗(倫理学者・慶応大教授)

〈1〉くどうれいん著『うたうおばけ』(書肆侃侃房、1400円)

〈2〉冨原眞弓著『ミンネのかけら』(岩波書店、2300円)

〈3〉東慎一郎著『ルネサンスの数学思想』(名古屋大学出版会、6300円)

 〈1〉東北の新進女性歌人のエッセー集だ。ピュアではち切れそうな感性が素晴らしい。ページを開けると妖精が飛び出します! 〈2〉中世と現代、ムーミン、シモーヌ・ヴェイユ、中世のカタリ派が語られる。はるかな夢と切ない記憶と細やかな愛が詰め込まれている。哲学に出会った時の感慨を思い出した。胸がときめく。〈3〉本年度の思想史関連書の白眉と思う。圧倒的力量を示す本だ。この本はまごうことなく世界一流である。本が輝いている。

瀧澤 弘和(経済学者・中央大教授)

〈1〉西山圭太・松尾豊・小林慶一郎著『相対化する知性』(日本評論社、2700円)

〈2〉岩村充著『国家・企業・通貨』(新潮選書、1400円)

〈3〉西郷甲矢人・田口茂著『<現実>とは何か』(筑摩選書、1600円)

 〈1〉は人間が世界を認識できる理由を、世界と脳の同型性で説明する。壮大な構想で久々の知的興奮を感じさせてくれる快著。〈2〉は近代経済成長を可能にした制度的枠組みが溶解する現状を描く。その根本の原因は経済成長の飽くなき政策的追求なのかもしれない。〈3〉は、哲学者と数学者が「圏論」という最新の数学理論を介して意気投合し執筆したもの。両著者の根本思想の一致に新しいパラダイムを予感する。

通崎 睦美(木琴奏者)

〈1〉サリー・ヒル編『14歳からの生物学』(白水社、2800円 松田良一、岡本哲治監訳)

〈2〉田中ひかる著『明治を生きた男装の女医』(中央公論新社、1800円)

〈3〉稲葉俊郎著『いのちは のちの いのちへ 新しい医療のかたち』(アノニマ・スタジオ、1600円)

 今年は、多くの人が自身の身体や健康、また医療について思いを巡らせたのではないだろうか。〈1〉はオランダの教科書の邦訳。日本の高校生物で習うハエやカエルではなく「ヒトの生物学」の基礎がわかる。〈2〉は日本で3人目の女医。「産科に限り貧窮者無償施療」とし、お産への医療介入の必要性を知らしめた。〈3〉の著者は医師。伝統医療、芸術までを視野に、「からだ」「こころ」「いのち」を知り、その力を呼びさまそうと語りかける。

宮部 みゆき(作家)

〈1〉シモン・ストーレンハーグ著『フロム・ザ・フラッド 浸水からの未知なるもの』(グラフィック社、2800円 山形浩生訳)

〈2〉土屋健著、群馬県立自然史博物館監修『リアルサイズ古生物図鑑 新生代編』(技術評論社、3200円)

〈3〉小松左京著『復活の日』(角川文庫、760円)

 〈1〉はポップで静かで美しい世界の破滅を描くストーレンハーグ作品の邦訳三作目。お話は一つ前の『ザ・ループ』から続いている。世界最大の粒子加速器が停止、原因不明の浸水被害を受けたあと、機械に寄生する謎の生物が発生する。「野良AIロボット」のビジュアルがすごい。〈2〉はこの新生代編で完結。古生代・中生代とセットでそろえれば一生楽しめる。〈3〉今年の新刊ではありませんが、今年の本としておののかずにはいられません。

仲野 徹(生命科学者・大阪大教授)

〈1〉ダグ・ボック・クラーク著『ラマレラ 最後のクジラの民』(NHK出版、3000円 上原裕美子訳)

〈2〉マシュー・スタンレー著『アインシュタインの戦争:相対論はいかにして国家主義に打ち克ったか』(新潮社、3800円 水谷淳訳)

〈3〉宮田裕章著『共鳴する未来 データ革命で生み出すこれからの世界』(河出新書、840円)

 書評しそこねた3冊。〈1〉インドネシアのラマレラは「クジラの民」の村。何百年も続くもりを使う漁法でクジラをる。そんな村にも近代化が押し寄せ、さまざまな問題が。〈2〉アインシュタインがまだ無名だったころの話。第一次世界大戦中、敵国であった英国の科学者が相対性理論の証明に向けて奔走する。〈3〉データ社会をいかに正しく導くべきか。医療をテーマに慶応大学医学部教授の宮田裕章がその未来を説く。勉強になりました。

橋本 五郎(本社特別編集委員)

〈1〉北岡伸一著『明治維新の意味』(新潮選書、1750円)

〈2〉村上陽一郎・中村桂子・西垣通著『ウイルスとは何か』(藤原書店、2000円)

〈3〉読売新聞政治部著『喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書』(新潮社、1500円)

 〈1〉は明治維新を民主化革命、人材登用革命とみて、廃藩置県や地租改正などの難題をなぜあれほど迅速に進めることが出来たかを解き明かす。
 〈2〉は科学史、生命誌、情報学の第一人者がコロナ禍を、科学万能信仰を脱却し、人間が「生きもの」として生きる社会への転換の機会だと説く。
 〈3〉は「たたき上げ政治家」がなぜ政治の頂点に立ち得たのか。首相官邸内の確執や菅政治の特徴なども交えながら、すぐれた読み物にしている。

尾崎 真理子(早稲田大教授・本社調査研究本部客員研究員)

〈1〉古井由吉著『われもまた天に』(新潮社、2000円)

〈2〉伊藤比呂美著『道行きや』(新潮社、1800円)

〈3〉エリック・ヴュイヤール著『その日の予定』(岩波書店、2100円 塚原史訳)

 〈1〉いつも遠くから眺めていた畏敬の作家は、未完となった遺稿の短編、その最後に鮮烈な一行を記して去った。衝撃はさめやらない。〈2〉詩人の書いた小説。散文としてすばらしい。夕刻、何千何万のつばめが空を飛び交い、死にに行くように“降る”光景を描いた「燕と猫」。私にもそれが見えた。〈3〉ヒトラーによるオーストリア併合までの経緯を、極限まで断片化した事実だけを精緻せいちに積み上げ、文学作品とした。初めて出会った真の歴史小説。

番外編(よみうり堂店主)

〈1〉伊藤亜紗著『手の倫理』(講談社選書メチエ、1600円)

〈2〉河崎秋子著『鳩護はともり』(徳間書店、1700円)

〈3〉ピーター・ヒル、ナイジェル・シメオネ著『伝記 オリヴィエ・メシアン』(音楽之友社、上下各6000円 藤田茂訳)

 他人の体にさわる、ふれる時、そこにどんな交流が生まれるのか。〈1〉は触覚によるコミュニケーションに新たな可能性を見る。コロナ禍で接触が減った今こそ考えたい。
 〈2〉は謎の男から鳩の守護を命じられた女性の奇想天外な物語。人と動物のふれあいを独自の視点から描いてきた著者ならではの意欲作だ。
 〈3〉は20世紀フランスの大作曲家の生涯をたどった評伝の決定版。高価な2冊本だが、創作の秘密に触れることができる。

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1754022 0 読書委員が選ぶ3冊 2021/01/12 05:20:00 2021/01/13 10:54:07 2021/01/13 10:54:07 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210104-OYT8I50021-T.jpg?type=thumbnail

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