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テレビの本です――。何という率直な書き出しだろう。本当にテレビは「オワコン」(終わったコンテンツの略語)なのか。若者のテレビ離れが叫ばれて久しいこの10年で、何か“爪痕”を残したバラエティー番組を定点観測し、記録した。
著者は2012年から弊紙で「月刊バラエティー」というコーナーを執筆し、現在は「アンテナ」という欄でテレビ評論を書き続けている。本書は読売新聞での10年間の連載をまとめたものだ。「長寿番組の終了や、制作費の削減など、テレビを取り巻く環境は想像をはるかに超える変化があった」と率直に語る。
14年3月に「笑っていいとも!」が最終回を迎え、人員削減など番組の制作環境が厳しくなる中で、同年に始まったテレビ東京系「家、ついて行ってイイですか?」を紹介した。「低予算でも、企画勝負で視聴者を引きつける番組が生き残る時代になった。制作者の創意工夫を活字にして残しておきたかった」という口調は熱を帯びた。
NHKの人気番組「チコちゃんに
テレビ番組の面白さを文字で伝えるため、芸能人の会話を生き生きと記した。一例として、萩本欽一さんの「コメディアンってね、(動きでいい形を見せるために)どこか痛くなんないとダメ」と「欽ちゃん節」が映像として浮かぶように記述している。
「テレビの次の10年も、激変が起きるでしょう」と予測し、「この目で確かめ、また何かの形で記録できたら」。テレビウォッチャーとして、本紙の「アンテナ」欄を執筆する意欲は衰え知らずだ。(双葉社、2035円)吉田祐也