評・土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』 ミシェル・ウエルベック著

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 ゴンクール賞受賞作『地図と領土』にしても、シャルリー・エブド事件で不幸な注目を集めた『服従』にしても、ウエルベックの作品世界の奇妙な魅力の根底には、その世界観のゆがみや不調和がある。それらがミステリアスにオフビートにリアルと絡まり合って、不穏で異様な緊張感と乾いた苦い笑いが物語を強力に牽引けんいんする、読者の脳をきまわして酔わせる。そうか、ラヴクラフトがその源泉だったかと本書に深く納得した。

 クトゥルフ神話で知られる怪奇幻想と幻視の作家ラヴクラフト(1890~1937)のウエルベックによる伝記で評論でエッセーでもあり、あるいは深々と〈ラヴクラフト愛〉に満ちたラヴレターか。作家の闇を読み解いてラヴクラフト読者には新しい視点をもたらし、未読の読者には理解への豊かな補助線となる。

 ウエルベックをここまでのめり込ませたラヴクラフトはやはり巨大な幻視者だったと思わせて、それがまた共に世界と人生にあらがい続ける物語のたくみウエルベックの理解につながる。ラヴクラフト好きもウエルベック好きも、まずは読むべし。星埜守之訳。

 国書刊行会、1900円

無断転載禁止
2638 0 書評 2018/01/15 05:20:00 2018/01/15 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180110-OYT8I50046-1.jpg?type=thumbnail

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