評・服部文祥(登山家・作家)

『138億年宇宙の旅』 クリストフ・ガルファール著

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書評(25日、東京都千代田区で)=栗原怜里撮影
書評(25日、東京都千代田区で)=栗原怜里撮影

知の旅に終わりはない

 一辺が1メートルの立方体の箱を、砂で満たし、その箱を300個用意する。その時の砂粒の数が、我が星、地球が属する天の川銀河の星の数とおなじらしい。

 その天の川銀河ですら大きな銀河ではなく、「観測可能な宇宙」には他に1700億個ほどの銀河があるという。

 もうこうなると、日常のスケールとはかけ離れすぎていて、なんだか自分の存在が馬鹿らしくなってくる。だが、ページをめくる手は止まらない。人類が理解している宇宙の姿、現代科学が明らかにしているこの世界の摩訶まか不思議さには、怖いほどの魅力がある。

 出てくる公式は、E=mc2、だけ。その方程式を導いたアインシュタインによれば、宇宙は広がっている。それは観測でも確認されている。ならばその方程式を使って宇宙の時間を巻き戻すと、宇宙の始まりは空間も時間もないということになる。

 これがビッグバン理論の元である。そしてここがようやく、現代科学知識をめぐる旅の始まりだ。光速とは何か、量子とは何か、時空とは、物質とは何か。歴史をたどりながら、巧みな比喩で読者にイメージを喚起させる。そして、場とは、ブラックホールとは、我々が存在する宇宙空間のその向こうには何があるのか。

 超高性能の施設で観測されている理論もあれば、いまだに思考実験からの予想を超えないものもある。ぼん、と爆発して宇宙が誕生してから138億年。日常生活からかけ離れた、この時空間のカラクリや成り立ち、無限大とも言える宇宙空間から、無限小とも言える原子、量子の世界へと、知の旅に終わりはない。

 少しだけ知って、やめることはできない。なのにすべてを知ることもできない。知れば知るほど、わからないことは増えていく。いったいなんなのだ、という混乱を包み込むのは、知らないより知れてよかった、という喜びである。塩原通緒訳。

 ◇Christophe Galfard=英ケンブリッジ大で理論物理学の博士号を取得後、科学解説者として活躍。

 早川書房 2400円

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2652 0 書評 2018/01/15 05:23:00 2018/01/15 05:23:00 書評(25日、東京都千代田区で)=栗原怜里撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180109-OYT8I50021-1.jpg?type=thumbnail

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