『盗まれる大学』 ダニエル・ゴールデン著

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盗まれる大学 中国スパイと機密漏洩(5日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影
盗まれる大学 中国スパイと機密漏洩(5日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影

開放性故のスパイ合戦

 グローバル化により、各国の大学は今や世界中から研究者や学生を集めている。特に強力な資金力やネットワークを持つ米国の大学は、質量共に他を圧倒する人材を常に招聘しょうへい・派遣し、さらなる発展の資本としている。

 しかし、その開放性・流動性のゆえに、米国の大学は一種の「セキュリティ・ホール」となり、先端技術や特許が海外に流出するルートにもなっている。本書冒頭では、中国人留学生が研究室から軍事関係の技術を盗み出して本国に流したのみならず、本人がそれをもとに中国で起業し、富を築いた経緯が詳細に描かれている。連邦捜査局(FBI)がマークし、彼の米国再入国は困難だというから、穏やかではない。本書は、こうした大学をめぐる「スパイ合戦」とも言うべき実態を、ピュリツァー賞受賞のジャーナリストが綿密な取材に基づいて明らかにしたルポである。

 注意すべきは、人文社会科学の分野や学内行政においても、難しい問題が存在することである。例えば著者は、ハーバード・ケネディスクールの学生や地域研究を専攻する研究者に対して、中央情報局(CIA)が積極的なリクルートを行っている事実を紹介し、学問の自由が阻害される可能性に警鐘を鳴らしている。スキャンダルを抱えた中国出身の米国大学教授が、FBIによって米国のスパイに勧誘されたケースも興味深い。この時大学当局は、自主的に彼の処分を行うのか、有用なスパイをかすためFBIの意向を受けて軽微な処分にするのか、揺れ動いた。大学に各国の情報機関が入り込む中、大学は時に深刻なジレンマに立たされる。

 近年日本でも留学生の数が激増し、大学における学問の自由と、知的資産や情報の保護、安全保障上の要請をいかに両立させるかは焦眉の課題となっている。本書で描かれている事実は「対岸の火事」ではない。全ての大学関係者に一読を勧めたい重要文献である。花田知恵訳。

 ◇Daniel Golden=米のジャーナリスト。ウォール・ストリート・ジャーナル在籍時の2004年にピュリツァー賞。

 原書房 2800円

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7585 0 書評 2018/02/19 05:27:00 2018/02/19 05:27:00 盗まれる大学 中国スパイと機密漏洩(5日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180213-OYT8I50042-1.jpg?type=thumbnail

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