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『プーチンとロシア人』 木村汎著

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(9日、読売新聞東京本社で)=稲垣政則撮影
(9日、読売新聞東京本社で)=稲垣政則撮影

風土が生む“専制君主”

 資源価格に依存する経済、旧態依然の制度、高い頭脳をもった若者の国外流出……国内のダイナミズムを失ったままのロシアだが、世界の政治を動かす影響力では、米国と並ぶ超大国である。強大な軍事力を背景に、ウクライナを始め旧ソ連邦構成国に圧力をかけ続けているのは、大公国、王朝時代からレーニン、スターリン時代を経て続く変わらぬ伝統だ。そのロシアで専制君主時代と同じ権力構造を維持しながら、世界政治に際立った影響力を駆使しているのがロシア正教徒である現大統領プーチンである。

 「ソ連の行動は、謎のなかの謎に包まれた謎」。本書はこのチャーチルの名言を繰り返し引用しながら、その謎を解こうと、歴史、風土、政治、社会に至るあらゆる現象を俎上そじょうに載せて、ロシア人の本質を理解しようとしている。ロシア人の謎=プーチンの謎を解明しようという試みである。学術書でなく人間学的アプローチだと記す著者は、広範な文献から実に巧みな引用をしながら、平易にロシアの謎を語っている。

 広大無辺な寒冷地が広がるユーラシア大陸のロシアには、専制君主と農奴だけが存在していた。その歴史が、ロシア人の「自由への欲求と不安」「巨大なもの、強いものへの渇仰」という行動の骨格を形づくる。そして共産主義革命によっても「労働を人生の本来の目的から逸脱した行為」とみなし、惰性と無気力、怠け者の行動様式は変わらなかった、というのである。

 「ロシアの歴史に暴虐の歴史の刻印を残した責任は、実は為政者ではなく民衆にあるのではないか」という、クレムリン宮殿の歴史を詳述したキャサリン・メリデールの言葉を思い出した。「クレムリンは実際、秘密警察のおかげで存続してきた」とも。いうまでもなく、現在の専制君主プーチンは、その秘密警察(KGB)出身である。プーチンの執務室にはピョートル大帝の肖像画が飾られているという。まさに、ロシアの歴史を体現している人物なのである。

 ◇きむら・ひろし=1936年生まれ。北海道大、国際日本文化研究センター名誉教授。著書に『遠い隣国』など。

 産経新聞出版 1800円

無断転載・複製を禁じます
8388 0 書評 2018/02/26 05:27:00 2018/02/26 05:27:00 (9日、読売新聞東京本社で)=稲垣政則撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180219-OYT8I50049-1.jpg?type=thumbnail

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