『津島佑子』 川村湊著 『林京子の文学』 熊芳著

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

11日付書評A面大評3『津島佑子』『林京子の文学』(6日、読売新聞東京本社内で)=萩本朋子撮影
11日付書評A面大評3『津島佑子』『林京子の文学』(6日、読売新聞東京本社内で)=萩本朋子撮影

運命を糧に書き抜く

 世を去った作家の記憶が新しいうちに、読み継ぐべき作品を伝える評論が出るのは重要なことだ。

 『津島佑子 光と水は地を覆えり』は2016年2月、68歳で病没した作家に伴走し続けた、川村湊氏の評論集。父、太宰治を1歳で亡くし、実兄と自身の息子にも先立たれた津島だが、〈一貫して光輝く華やかさと明るさがあった〉という。それは十指に余る賞を獲得した才能の輝きであり、アジア各地に仲間と旅を楽しんだ、気さくな人柄も指している。

 ただ、本著を通じて振り返れば、津島作品には現代文明が人間に及ぼす暗い影が差し始めてもいた。

 晩年の長編『ヤマネコ・ドーム』『ジャッカ・ドフニ』は、根拠地を離れ、漂泊を続ける少年少女の物語。これらは3・11後の現実とも共振し、遺作『半減期を祝って』に表れた未来社会への想像力は、この先いっそう広がっていくはずだった。

 津島と同じ同人誌「文芸首都」出身の林京子が逝ったのは昨年2月。14歳まで父の赴任した中国で育ち、故郷長崎で8月9日に被爆。後遺症と闘いながら86歳まで生き抜いた。

 『林京子の文学 戦争と核の時代を生きる』の著者、熊芳氏は中国から法政大に留学中、川村氏に指導されている。「上海は私の故郷」「ごめんなさいね」と記された便りを林からもらい、関心を深めたとも記されている。

 デビュー作『祭りの場』で書かれた被爆体験は、『長い時間をかけた人間の経験』(2000年)で人類の歴史とつながった。3・11後には『再びルイへ。』で原発事故に言及した。熊芳氏は林の生涯において幾重にももつれた加害と被害の問題を、丁寧に解きほぐしていく。

 与えられた運命を糧に最期まで書いた二人の作家。作品に込めた思いを、細部まで見逃すまいとする批評家と研究者。多くを教えられた。

 ◇かわむら・みなと=1951年北海道生まれ。文芸評論家。著書に『文芸時評1993―2007』『戦後批評論』など多数。

 ◇ション・ファン=中国江西省生まれ。南昌大学外国語学院専任講師。

 『津島佑子』インスクリプト 2600円

 『林京子の文学』インパクト出版会 2800円

無断転載禁止
11826 0 書評 2018/03/19 05:24:00 2018/03/19 05:24:00 11日付書評A面大評3『津島佑子』『林京子の文学』(6日、読売新聞東京本社内で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180312-OYT8I50071-1.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

一緒に読もう新聞コンクール

新着クーポン

NEW
参考画像
ランチでご来店のお客様にジェラートをサービス
NEW
参考画像
600円300円
NEW
参考画像
アクティビティご利用でソフトドリンク1本サービス
NEW
参考画像
ご宿泊のお客様の夕食時に地酒(お銚子)またはソフトドリンク1本サービス

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ