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『昏い水』 マーガレット・ドラブル著

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22日付書評A面大評上『昏い水』(13日、本社で)=武藤要撮影
22日付書評A面大評上『昏い水』(13日、本社で)=武藤要撮影

静寂に溶け込む死

 主人公であるフランは70歳を超しても、老人養護施設の住居の改善・調査をする財団に雇われ、クルマでイングランドの施設を巡回する。フランは「老い」と折り合いがつけられず、絶えず忙しくしている。手料理を届けるなど世話を続けている別れた夫、老いてなお老人の集まりに文学を教える幼いころからの友人、戦後すぐの子供時代、隣り合わせの住まいに育ち、介護関係で著名な人となった幼馴染なじみ、息子が身を寄せるカナリア諸島の高名な歴史家、フランをめぐって、登場する人々は、すべて、人生の日没ともいえる「老い」を送る人々である。

 400ページ近いこの老人小説には、劇的なストーリーの展開はなく、生きてきた過去の塗り絵に色を施すような記憶と、勝ち目のない戦である「老い」を過ごす日々が、イェーツやシェイクスピアなどの言葉を巧妙に挟みながら描かれる。

 冒頭、フランは子供の頃から、偉人の最期の言葉が好きだったと始まる。ベートーヴェンの「天国では耳も聞こえるだろう」、ウォルター・ローリーの「心の向きが正しいのなら、首の向きなんかどうだっていい」、この引用に象徴されるように、英国の小説らしいユーモアの視点を失わずに、死に至るそれぞれの老人の姿を、徹底して日々のディティールを積み重ねながら描いている。物語は、描かれた老人たちが、そして誰もいなくなって終わる。

 80歳になろうとしているマーガレット・ドラブルの老人小説は、ともすれば、あまりに過剰な情景描写に辟易へきえきすることもあるのだが、英国文学の伝統に立ち返ったような距離感を持ちながら、それぞれの人物を描いていることで、老人の死が静寂に溶け込んで行くような感動を与えてくれる。タイトルは「くらい水が押し寄せてくる、じける魂の足元が洗い流されてゆき、からだが少しずつ死んでゆく」(D・H・ロレンス『死の船』)によるようだ。武藤浩史訳。

 ◇Margaret Drabble=1939年生まれ。65年未婚の母を描いた『碾臼(ひきうす)』がベストセラーに。

 新潮クレスト・ブックス 2300円

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18063 0 書評 2018/04/30 05:28:00 2018/04/30 05:28:00 22日付書評A面大評上『昏い水』(13日、本社で)=武藤要撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180423-OYT8I50063-T.jpg?type=thumbnail

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