評・土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

『〈ミリオンカ〉の女 うらじおすとく花暦』 高城高著

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『<ミリオン力>の女』(23日午後4時37分)=三浦邦彦撮影
『<ミリオン力>の女』(23日午後4時37分)=三浦邦彦撮影

「浦潮お吟」の大活躍

 日露戦争を前にした帝政ロシア沿海州の港町ウラジオストク。北海道は函館からワケあってウラジオストクの遊廓ゆうかくに売られ、娼妓しょうぎ「浦潮お吟」として名をせた日本人女性。ロシア国籍を持つアメリカ人実業家に苦界から救出され、自らもロシア国籍を得る。荒々しい辺境の港町でたくましくしぶとくりんと生きる、その姿を描いた歴史エンターテインメントである。

 厳寒の地の四季折々の花々をモチーフに、シベリア鉄道建設に沸き、捕鯨や漁業、鉱山開発や軍港のにぎわいと、辺境の国際都市に言語もさまざまに一攫いっかく千金を求めて群がる、米英露に独仏などの欧州人、満漢鮮人に日本人、その人種の坩堝るつぼのスラム街ミリオンカの闇世界と、アメリカの西部開拓時代を思わせる荒っぽい新興都市の空気が読者の鼻腔びくうをくすぐる。

 お吟はそんな港町で無国籍な上流社会を漂流しながら、自らを食い物にした遊廓に娼妓を助け出すために乗り込み、恩人の実業家と敵対する銀行家一族の流血の抗争に巻き込まれ、デリンジャー(小型拳銃)を手に刺客と対峙たいじしてはあっぱれ鉄火な啖呵たんかを切って見せる。

 一九五五年、米軍占領下仙台を舞台としたハードボイルドミステリー「X橋付近」によりデビュー、やがて筆を折り、二〇〇七年に執筆を再開。初期作品の仙台、戦後の札幌、文明開化の函館にバブルのススキノ、そして本作のウラジオストクと、北の都市の空気を緻密ちみつに描き、そこに生きる人々の生を活写して追随を許さない著者には犯罪や暴力に手を染めるのもいとわない女<由利>を主人公とした連作短篇たんぺんがあるが、お吟はその由利を彷彿ほうふつとさせる。

 お吟は<函館水上警察>シリーズ「ウラジオストクから来た女」(創元推理文庫『冬に散る華』所収)にも登場するが、本書にも同シリーズのおなじみの面々が顔を出すのでファンはご注目を。カバーや章扉に配されたウラジオストクの古写真も興趣をそそる。

 ◇こうじょう・こう=1935年、北海道生まれ。元新聞記者。日本のハードボイルド小説の先駆けとされる。

 寿郎社 2200円

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20172 0 書評 2018/05/07 05:26:00 2018/05/07 05:26:00 『<ミリオン力>の女』(23日午後4時37分)=三浦邦彦撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180501-OYT8I50042-T.jpg?type=thumbnail

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