評・苅部直(政治学者・東京大教授)

『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』 安田峰俊著

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 一九八九年六月四日、中国の政治体制の民主化を求め、北京の天安門広場を埋め尽くした学生たちが武力によって弾圧された天安門事件。現在の中国では「六四」元のネット送金が不可能になっているほど、その情報はタブーである。

 中国社会の深部に分け入る取材を続けるルポライターが、時間と足を使って、天安門の運動に関わった人々、六十人以上に取材し、彼らの生の声を書き記した一冊である。現在はビジネスで成功し、かつての運動を否定的に見ている人物もいれば、亡命の地でいまだに中国民主化の夢を語り続けるリーダーもいる。

 ほとんどの場合、事件ののちの人生経験と、さらに経済成長という中国社会の巨大な変化のなかで、その考えは変わらざるをえない。デモの武力鎮圧のさいに漂った、中国社会の崩壊に対する恐怖と、学生たちがもし勝利したとしても、やがて現在のような専制体制に行き着かざるをえなかったのではないかという諦め。それが多くの言葉から伝わってくる。著者の筆致は、その思いを静かに受けとめながら、かつての若者たちと苦みを共有するのである。(KADOKAWA、1700円)

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31969 0 書評 2018/07/16 05:22:00 2018/07/16 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180710-OYT8I50061-T.jpg?type=thumbnail

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