『ジャコメッティ 彫刻と絵画』 デイヴィッド・シルヴェスター著
完了しました

細い彫刻の謎に迫る
背丈こそ実物大だが、枝のように細い
なぜ、ジャコメッティが描き、彫刻にする人物が、実物と比べて、限りなく細長くなっているのか。本書は批評家として初めてヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受け、ジャコメッティのモデルを務めた経験も持つ著者が、作家への取材や、残された詩や文章からその謎に迫ったものである。BBC放送で行われた著者と作家の対談も完全収録されていて、わかりやすい形で理解が進むようにできている。
「デッサンしているとき、わたしはいつも見えていると確信しているサイズよりすべてが小さくなることに驚嘆していたのだ。仕事をしていないときでさえ、もはや実物大の人物像に戻ることができない」。作家の言である。
著者は、こうした言葉を受けて、作家が問題としていたのは「彫刻内部で観念的な距離を創造するだけではなく、彫刻全体とそれを注視する者の
ジャコメッティの青春期は、3次元の現実を2次元の画布に翻訳しようとするキュビスム、現実と
◇David Sylvester=1924~2001年。英国の美術評論家。著書に『回想フランシス・ベイコン』など。
みすず書房 5000円