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『ジャコメッティ 彫刻と絵画』 デイヴィッド・シルヴェスター著

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「ジャコメッティ 彫刻と絵画」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影
「ジャコメッティ 彫刻と絵画」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影

細い彫刻の謎に迫る

 背丈こそ実物大だが、枝のように細い体躯たいくと、てのひらに収まるほどのウエスト、それでいて、空間のなかで、圧倒的な存在感を放っている。数十年も前に、初めてジャコメッティ(1901~66年)の彫像を雑誌の写真で見たときの記憶は忘れられない。

 なぜ、ジャコメッティが描き、彫刻にする人物が、実物と比べて、限りなく細長くなっているのか。本書は批評家として初めてヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受け、ジャコメッティのモデルを務めた経験も持つ著者が、作家への取材や、残された詩や文章からその謎に迫ったものである。BBC放送で行われた著者と作家の対談も完全収録されていて、わかりやすい形で理解が進むようにできている。

 「デッサンしているとき、わたしはいつも見えていると確信しているサイズよりすべてが小さくなることに驚嘆していたのだ。仕事をしていないときでさえ、もはや実物大の人物像に戻ることができない」。作家の言である。

 著者は、こうした言葉を受けて、作家が問題としていたのは「彫刻内部で観念的な距離を創造するだけではなく、彫刻全体とそれを注視する者のとのあいだでの観念的な距離を創造すること」だったとする。彼にとって彫刻とは、「自己充足的な存在」ではなく、彫刻が周囲に作用して空間が膨張して見えるといった、「空間的文脈から分離できないもの」だったのだ。

 ジャコメッティの青春期は、3次元の現実を2次元の画布に翻訳しようとするキュビスム、現実と乖離かいりしたシュールレアリスムなど、絵画や彫刻の概念、手法そのものを覆す動きが脚光を浴びた。ジャコメッティもピカソやブルトンと交流しその種の作品を残しているが、彼の本質は、時代の流れを超えて、目に見える形の現実と、記憶にある形に対する果てしなく厳しい葛藤であったともいえる。20世紀を考える意味でも、興味深い書となっている。武田昭彦訳。

 ◇David Sylvester=1924~2001年。英国の美術評論家。著書に『回想フランシス・ベイコン』など。

 みすず書房 5000円

無断転載・複製を禁じます
33516 0 書評 2018/07/30 05:27:00 2018/07/30 05:27:00 「ジャコメッティ 彫刻と絵画」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180723-OYT8I50009-T.jpg?type=thumbnail

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