『依存的な理性的動物』 A・マッキンタイア著 高島和哉訳 『ジョン・ロック』 加藤節著

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「依存的な理性的動物」「ジョン・ロック」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影
「依存的な理性的動物」「ジョン・ロック」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影

共同性の実現に向け

 動物と人間との違いは何か。周囲の環境と身体に埋めこまれた本能とによって、動物の行動は決まる。これに対して人間は個々の人格をもち、計画して行動を選びうる。それが西洋の近代哲学の立場であった。

 いまでは文系・理系のさまざまな分野で、この立場は批判的な検討にさらされているが、倫理学・政治学の理論として、いかに受けとめるか。米国のコミュニタリアニズムの哲学者、A・マッキンタイアがその課題にとりくんだ。イルカやゴリラも言葉に類した交信手段によって協力関係を築き、そのなかで生きている。人間も赤ん坊なら、他者からのケアに依存しないかぎり生きられない。その点で人間も「依存的動物」であろう。

 しかし人間は「理性的」な動物でもある。個人は理性を働かせて自立し、素朴な欲求をのりこえ、目的を追求する。そのために他者との共同生活のうちで教えあう関係が、個人には欠かせない。そこでコミュニティの再建が重要になる。

 個人主義の近代哲学として、マッキンタイアが批判の対象とする重要人物の一人が、ジョン・ロックである。しかし加藤節によるロック論は、個人の自己閉塞へいそくをこえた「公共性」の追究を、その哲学に見いだす。

 ロックはたしかに、個人のプロパティの保全を目的とする政治秩序の樹立を説く。だがプロパティが意味するのは、資産のみにとどまらない、その人に「固有の」ものごとであり、その保全は「全人類の存続」という目的に沿って、神から命じられた義務である。したがって個人が契約を通じて社会を作ることも、「理性的被造物」としての共同性の実現という意味をもっていた。

 持続するコミュニティに期待をかけるマッキンタイアとは異なって、加藤が強調するのは、個人のプロパティを破壊する政治権力の危険性に対する抵抗である。しかし個人性と共同性の関係に始まる多くの思想課題に関して、二冊の本は対話の共通の地平に立っている。

 ◇Alasdair MacIntyre=1929年生まれ。著書に『美徳なき時代』。

 ◇かとう・たかし=1944年生まれ。

 『依存的な理性的動物』法政大学出版局 3300円

 『ジョン・ロック』岩波新書 820円

無断転載禁止
33612 0 書評 2018/07/30 05:23:00 2018/07/30 05:23:00 「依存的な理性的動物」「ジョン・ロック」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180723-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

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