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評・岸本佐知子(翻訳家)

『日本のヤバい女の子』 はらだ有彩著

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「日本のヤバい女の子」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影
「日本のヤバい女の子」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影

物語の軛を解くと……

 昔話には、不可解だったり、残酷だったり、怪物的だったりする女性キャラが数多く登場する。元カレになぜか毒ガスをプレゼントする乙姫とか。求婚者に無茶振りをするかぐや姫とか。好きな男に捨てられて蛇と化す清姫とか。

 でも本当にそうなんだろうか。みんな、もともとは血の通った普通の人間だったのではないか? そう考えた著者が、彼女たちを生身の「女の子」として召喚し、友だち同士みたいに語り合ってみたのがこのエッセイ集だ。

 たとえば大工である夫の失敗を自分の機転で救いながら、「それでは夫に恥をかかせたことになる」と自害してしまった「おかめ」。これでいいの、だって女だもの、と言う彼女に、著者は「うっせーバカ! アホ! ステーキ食ってカラオケ行くぞ!」と喝を入れる。夫(彦星)の父親が実は鬼だったために大変な苦労をする織姫になり代わっては、「親が鬼なら初めに報・連・相してくれよ!」とキレまくる。ああ、わかる、わかるよこの感じ。これはまるきり女子会の会話そのものだ。おかめが友だちだったら、私だってきっと同じことを言いそうだ。

 著者の手で物語のくびきを解かれ、人間の顔を取り戻した女の子たちは、みんな自由で強くてとても魅力的に見える。虫づる姫君は、好きなことに一心に打ち込む探究者。鬼怒沼きぬぬま機織姫はたおりひめは、仕事命のバリキャリ女性。

 ことに輝くのは、不当な仕打ちにあって怒りを爆発させる女たちだ。彼女たちは人の形を手放す代わりに、生まれて初めて自由を得る。蛇に変身して驀進ばくしんする清姫は、生きるエネルギーに満ちあふれている。

 当然の怒りを表明した女性を異形と言うのなら、そんなふうに見えてしまう「物語」のほうこそよっぽどヤバい呪いだ。私たちにはまだまだ怒らなければいけないことが山ほどある。怒れる女の子たちが百年後の昔話の中で鬼や蛇にならないために、この本はある。

 ◇はらだ・ありさ=関西出身。女の子のためのファッションブランド「mon.you.moyo」代表。

 柏書房 1400円

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37570 0 書評 2018/08/27 05:27:00 2018/08/27 05:27:00 「日本のヤバい女の子」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180820-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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