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『世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生』 デイヴィッド・ベロス著

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「世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影
「世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影

主人公と重なる作家像

 1862年の出版以来、世界中で読み継がれ、無数の映画やドラマ、ミュージカルの原作となっている小説『レ・ミゼラブル』。本書は、執筆から出版に至る経緯をたどり、小説の内容を克明に精査することによって、著者ヴィクトル・ユゴーの人物と、19世紀フランスの歴史を浮かび上がらせたものである。

 ユゴーは1802年に生まれ、10代からその詩才を称賛され、29歳のとき歴史小説「ノートルダム・ド・パリ」で圧倒的な成功を収めた。自由主義、共和主義的立場から政治にも携わり、45年に『レ・ミゼラブル』の草稿に着手したが、ルイ・ナポレオンのクーデターで弾圧を受け、英仏海峡の島に亡命する。再び、原稿に向かって最終章を書き終えたのは61年。版元と契約した著作料は翻訳権料と合わせて30万フランという、当時の史上最高額、1年を経ずして主要な言語に翻訳されるなど、すべてにおいて桁外れの出版だった。

 『レ・ミゼラブル』の物語の時系列は、ナポレオン戦争などの歴史的な事件に合わせて正確に組み立てられているという。フランスでは革命後も、どの町にも物乞いがあふれていた。貧困と犯罪とのかかわりについてユゴーは本作中でこう書いている。

 <零落しても堕落しない人間はまれである。ある点では、恵まれない者と恥しらずとが混合して、みじめな人たちレ・ミゼラブルという、宿命的なただ一つの言葉に、融合してしまうものだが、それはだれの罪だろうか?>

 パンをひとつ盗んだというわずかな罪に釣り合わない重い懲役刑を受けて脱獄、何度も追われる身となりながら、貧しく、あわれな人々への施しを続けた主人公ジャン・ヴァルジャン。それは、カトリック教会とは距離を置きながらも、あつい信仰心を持ち続け、貧しい人びとの境遇に深く共感していたユゴーとも相通じるものである。立石光子訳。

 ◇David Bellos=1945年、英国生まれ。プリンストン大教授。専門は19、20世紀フランス文学、比較文学。

 白水社 3800円

無断転載・複製を禁じます
37641 0 書評 2018/08/27 05:25:00 2018/08/27 05:25:00 「世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生」(13日、東京都千代田区で)=高橋美帆撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180820-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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