『ホモ・デウス 上・下』 ユヴァル・ノア・ハラリ著

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書評「ホモ・デウス」(5日、本社内で)=西孝高撮影
書評「ホモ・デウス」(5日、本社内で)=西孝高撮影

超人は誕生するのか

 七万年前に起こった認知革命のお陰で、われわれホモ・サピエンスはこれほどまでに地球にはびこった。物語を共有することで現人類は仲間と密接に協力する能力を得て、一気に最強の生物に躍り出たのだ。そこに農業革命(一万二〇〇〇年前)が加わり、都市や軍隊が生まれていく。さらに文字や貨幣が生まれ(五〇〇〇年前)、データの記憶処理能力が個体の制約から解放されて、ヒエラルキーの強化、仕事の細分化、相互協力の拡大などが進む。

 軽妙な語り口と幅広い知識で説得力のある人類史を展開した前著「サピエンス全史」を軽くなぞりながら、本書は人類の未来を展望する。覇権争いの戦争と病気と飢餓という、近年、人類の存続を揺るがしてきた問題も、二一世紀に入り、大きなものではなくなってきた。

 近代以降、我々はヒューマニズムという人間至上主義を掲げ、個々の人間の命と人類の存続、人類の幸福こそが自分たちの存在目的であるかのように振る舞ってきた。文明化したシェルターに住み、食料を出来るだけ自分たちで管理する。自然環境から距離を置き、生態系から離脱することを目指しているかのようだ。

 そして今、AIは人間の知能を越え、クローンや幹細胞の研究は遺伝子劣化を克服しようとしている。そのふたつが近未来に合わさって、サピエンスより賢くて強い存在(ホモ・デウス)が生まれたら、我々はどうなるのか。人間が地球で好き勝手振る舞っていいのは一番賢い存在だから、というヒューマニズムのよりどころが、今度は我々を追いつめる。動物たちが人間に屈したように、人間も超人に屈するのか。

 寿命が延びれば繁殖する必要はなくなる。有機物であることをやめるという未来もあるかもしれない。人間が寿命(死)を管理できる時代になったときに、命とは一体どのような存在となるのか。自然物でありながらそれを克服したい人間の行く末に迫る。柴田裕之訳。

 ◇Yuval Noah Harari=1976年生まれ。イスラエル人歴史学者。ヘブライ大で歴史学を教える。

 河出書房新社 各1900円

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44882 0 書評 2018/10/22 05:27:00 2018/10/22 05:27:00 書評「ホモ・デウス」(5日、本社内で)=西孝高撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181016-OYT8I50052-T.jpg?type=thumbnail

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