『ふたりのトトロ 宮崎駿と「となりのトトロ」の時代』 木原浩勝著

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書評「ふたりのトトロ」(5日、本社内で)=西孝高撮影
書評「ふたりのトトロ」(5日、本社内で)=西孝高撮影

手描きの線が生む“希望”

 我が子がせがむ度にるトトロ。台詞せりふを覚えるほどくり返し観ているのに、なぜ息子と娘は飽きることなく歓声をあげるのか。何故に私はトトロが気合いを入れてどんぐりが芽吹くシーンで、こんなにも胸の奥底がきゅうと喜びに共鳴するのか。答えは当たり前なほどに簡単だった。一つの作品に賭けている情熱も努力も苦労も何もかもがすさまじいのである! この本は映画『となりのトトロ』の制作デスクを担当した木原さんによる、宮崎駿監督やスタジオジブリにまつわるお話である。

 あくまでも私の解釈であるが、たくさんの宝探しができるように宮崎駿監督は1コマ1コマにそれはそれは丁寧に、優しい眼差まなざしで、ちょいとばかし魔法の粉をかけている。そうして立ち起こるひとつの物語は、まるで現実にあったか、はたまたこれから起こるのかと信じて疑わないような、夢ともつかない“希望”として我々の心に足跡を残す。ネコバスになって田畑を駆け抜け、メイの気持ちで姉を励まし、かえるになってばぁと声を漏らし、苔生こけむす樹に気持ちを添わせているのはとなりにいる我が子だけではなく、私自身だ。

 宮崎駿監督が木原さんに「この作品は楽しく作ってください」と命を下したように、そこに登場するすべての息吹いぶくものたちの目線で一雫ひとしずくも不思議がないように、しかし喜びがあふれるように、徹底的に細部まで描写にこだわってトトロは作られている。すべての線が生きるという意志を持って根を張っているのだ。手描きとデジタルの違いはここに出るのだと思う。

 育児中だから、若くないからもう書けないのだ、なんて逃げは通用しない。詩作に悩むなんて100年早いのだと言わんばかりに宮崎駿監督は作品そのもので私を追い込む。悩めるすべてのクリエイターにお薦めします!! そう言えば! トトロがコマを回す瞬間に出したあのひもはどこに消えたのかは書いてなかったのでそれだけが謎のまま(笑)。

 ◇きはら・ひろかつ=1960年、兵庫県生まれ。『天空の城ラピュタ』、『魔女の宅急便』などの制作に関わる。

 講談社 1500円

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44913 0 書評 2018/10/22 05:23:00 2018/10/22 05:23:00 書評「ふたりのトトロ」(5日、本社内で)=西孝高撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181016-OYT8I50058-T.jpg?type=thumbnail

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