『民主主義の死に方』 スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット著
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失われた寛容と自制
「二〇一六年、アメリカ人はただ大衆扇動家を大統領に選んだだけではない。かつて民主主義を
民主主義の基盤となる三権分立を初めて説いたのは、モンテスキューの『法の精神』だが、著者によれば、憲法や制度だけで、民主主義は機能しない。米国が建国以来、さまざまな問題を克服しながら民主主義を維持できたのは、その制度を機能させるための共通の理念と慣習を「規範」という形でつくりあげていたからだという。対抗する政党間にも「寛容」と「自制」を基本とする「節度」があった。ところが共和党はそれを投げ出し、どんな手段を使っても勝つという戦略をとることによって、激しい二極対立の状況をつくり出してしまった。
共和党支持者の中核である白人プロテスタントはおよそ200年にわたり、米国の選挙民の多数を占め、経済的、文化的に優位に立つ存在だった。その彼らが今や少数派となり、恐怖感と不安が共和党との
ラテンアメリカなどにおける「民主主義の崩壊」を研究テーマにしてきた著者は、「選挙というプロセスを挟んだ民主主義の崩壊は、恐ろしいほど
歴史的事実として、多民族国家において、すべての集団に社会的、経済的な平等が実現したことはないが、米国は民主主義を護るために並外れた犠牲を払ってきた。その米国で、「民主主義がその内側から死ぬことを防がなくてはいけない」と著者は結んでいる。濱野大道訳。
◇Steven Levitsky,Daniel Ziblatt=共に米ハーバード大教授。ニューヨーク・タイムズ紙などへ多数寄稿。
新潮社 2500円