評・苅部直(政治学者・東京大教授)

『卓さんの文人楽』 竹内勝巳著

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 高木たくは幸田露伴のおい、ヴァイオリニスト安藤こうの息子として生まれた、ドイツ文学者にして小説家。『露伴の俳話』(『人間露伴』)という名著でその名を知り、どんな人物かと思っていたが、その人格と生涯について小説の形で教えてくれる本が刊行された。

 「芥川賞を蹴った男」という副題のとおり、一九四〇年に芥川賞を与えられたのに、辞退した事件が一般には知られている。奇妙に思えるその行動が、実は作品の完成にむけた真剣さから来ていることを、晩年に交流のあった著者が説き明かす。作品の出来にこだわって名利を顧みない姿勢は、幸田露伴・文の父娘とも共通するかもしれない。

 高木が旧制高校の教授として教え子の学徒出陣を見送り、戦後は戦没学生の手記の刊行を側面から支えた事実も、この本から教えられた。激動する社会の片隅で、四十年にわたり日本神話を題材にしたオペラの作詞・作曲にとりくんでいたという。その姿は一見、孤立していながら、創作にむけた情熱とはいかなるものかを、背中で世間に示しているかのようである。(栄光出版社、1300円)

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48834 0 書評 2018/11/19 05:22:00 2018/11/19 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181112-OYT8I50019-T.jpg?type=thumbnail

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