評・森健(ジャーナリスト・専修大非常勤講師)

『FEAR恐怖の男 トランプ政権の真実』 ボブ・ウッドワード著

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『恐怖の男』書評用(15日午後2時27分、東京本社で)=小林武仁撮影
『恐怖の男』書評用(15日午後2時27分、東京本社で)=小林武仁撮影

危うい大統領の実像

 政権発足から2年。メキシコ国境での壁建設などの大統領令やマティス前国防長官を含む多くの要職の解任など、正常とは思えない数々の判断をしてきたアメリカのトランプ大統領。だが本書を読むと、実像はもっとひどいことがわかる。著者はかつてウォーターゲート事件を暴いたベテラン記者。本書でも政権内幕の信じがたい話が活写される。描かれるのは政権発足の前段から大統領に就任して1年半あまりの日々。その間、ロシアゲート、北朝鮮の核ミサイル問題、貿易問題などの難題が続いていく。

 まず驚くのは彼が大統領としての仕事を根本的に理解していないことだ。当選後、政治任用の4000のポストに誰をあてるかもまるで用意がなく、ヨーロッパや韓国との安全保障の連携もお金の支出額でしか判断しない。

 お金の話には「興奮」するが、政府の財政運営は理解していない。財政赤字を減らせという一方、政府は財務省証券を発行し、売ってもうけを出せばいいという。それは財政赤字を増やすことだが、指摘すると「どういう意味だ?」。貿易や産業の関係にも疎く、製造業からサービス業への流入が多いのは「理解できない」。

 恐ろしいのは、記憶も不確かなところだ。オーストラリアの首相と関税について除外すると請け合ったのに、8ヶ月つと話したことも覚えていない。そして、夜はテレビをつけっぱなしで見続け、ツイッターに興じる。

 こうした危うい大統領を懸念し、中枢の要職は大統領を通さずに仕事をする。前国務長官は独断でカタールとの外交文書の覚書に調印し、国家経済会議委員長は韓国大統領宛の親書を隠したりする。隠したのは米韓自由貿易協定の破棄という内容だったためだ。

 前国務長官は会議で本人が不在の時にみんなに言う。「あの男は知能が低い」。こうした人物が世界最大の権力を握っている。読んでいるほうも恐怖を覚える本である。伏見威蕃訳。

 ◇Bob Woodward=1943年生まれ。米国を代表するジャーナリスト。現在はワシントン・ポスト紙副編集長。

 日本経済新聞出版社 2200円

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296970 0 書評 2019/01/28 05:27:00 2019/01/28 05:27:00 『恐怖の男』書評用(15日午後2時27分、東京本社で)=小林武仁撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190121-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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