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評・篠田英朗(国際政治学者・東京外国語大教授)

『越境の国際政治』 田所昌幸著

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 移民の問題が、各国の政治を揺らしている。トランプ大統領の「壁」、イギリスの「ブレグジット」、欧州各国における「ポピュリスト」の台頭などは、すべて移民問題によるものだ。日本でも入管難民法改正が議論になった。

 そこで移民の問題を学術的に考え直してみたくなった人には、本書が有益だ。第一線の国際政治学者が、在外研究で得た知見を投入して書き上げた。同時代に対する鋭い問題関心が、冷静な国際政治の認識と、深い歴史的知識によって、新しい次元に昇華している。

 本書は、数百年にわたる時間軸で、国境を越える人間の移動が、どのように国際政治に影響し、影響されてきたのかを、劇的に描き出す。著者の博学は、国境を越える人の移動がもたらした数々の歴史上の事件を、読者の前に提示し続ける。次々と興味深いエピソードを紹介する本書は、さながら移民の歴史辞典のようである。

 既存の国際政治観は、長い歴史の中で捉え直された移民の理解によって、どう変わっていくのか。著者の問いは今後も続いていくだろう。(有斐閣、5500円)

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297011 0 書評 2019/01/28 05:22:00 2019/01/28 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190121-OYT8I50054-T.jpg?type=thumbnail

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