[本よみうり堂]日本のアニメーションはいかにして成立したのか 西村智弘著

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挑戦続ける開拓精神

 ◇評・加藤 徹(中国文化学者 明治大教授)

 アニメは世界語だ。海外でanimeと言うと、日本の漫画アニメーションだけを指し、一般のanimationと区別するほどだ。

 本書の著者は、映画と美術の評論家である。明治の末から現代まで、100年以上に及ぶ日本のアニメーション創作の流れを、膨大な資料と図版を使って明らかにする。商業的なヒット作だけでなく、自主制作の実験的作品や、前衛的、芸術的な作品も多数、取り上げる。

 戦前の日本にはアニメーションという言葉も概念もなかった。漫画映画、影絵映画、人形映画などの個別の名称しかなかった。戦後もしばらくは同様だった。1960年、「アニメーション三人の会」を結成したイラストレーターの真鍋博らも、説明に苦労した。雑誌に「動画という意味だ」と答えると「童画」と誤植された。NHKに出演して口を酸っぱくして説明しても、アナウンサーの反応は「ああ、そうですか、難しい言葉ですねえ」。隔世の感がある。

 1963年、手塚治虫の『鉄腕アトム』のテレビ放送が開始。当時、30分という長い尺で複雑なストーリーを展開するテレビアニメは、海外にもなかった。予算や製作時間の制約もあり、秒あたりの絵の枚数や動きを減らしたリミテッドアニメーションになった。賛否両論に分かれた。一部のアニメーターは、リアリズムを離れて動きを創るという新鮮味に驚き、可能性に着目した。

 手塚は芸術家肌だった。一番作りたいのは実験的アニメで、テレビはその資金稼ぎだと公言した。日本のアニメ作品には、新しい挑戦を続ける開拓精神があふれていた。

 1990年代後半から、日本のアニメは外国で注目されるようになった。漫画アニメとアート志向のアニメーション作品に対する位置づけが、日本と世界で逆転している、という著者の指摘は興味深い。アニメも日本文化も、過去100年、予測不能の進化を続けてきた。さて次は。本書を読むと、わくわくしてくる。

森話社 3400円
森話社 3400円

 

 ◇にしむら・ともひろ=映像評論家、美術評論家。専門は映像史、現代美術。著書に『日本芸術写真史』など。

無断転載禁止
406936 0 書評 2019/02/01 05:00:00 2019/04/03 10:39:23 日本のアニメーションはいかにして成立したのか(18日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190129-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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