キッシンジャー超交渉術 ジェームズ・K・セベニウス、R・ニコラス・バーンズ、ロバート・H・ムヌーキン著…日経BP社 2200円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

Kissinger the Negotiator

外交の巨匠を詳細分析…評・篠田英朗(国際政治学者 東京外国語大教授)

◇James K.Sebenius◇R.Nicholas Burns◇Robert H.Mnookin=いずれもハーバード大学教授。
◇James K.Sebenius◇R.Nicholas Burns◇Robert H.Mnookin=いずれもハーバード大学教授。

 ハーバード大学大学院の交渉学の専門家たちが、20世紀アメリカ外交の巨匠・キッシンジャーを、交渉学の観点から分析した本である。著者たちは、交渉学の観点からキッシンジャーを体系的に分析した初めての書だと誇る。確かに、期待を裏切らない精巧な内容だ。本書を読むと、キッシンジャーという類いまれな外交家が、交渉学の専門家からも尊敬されるカリスマである理由が、よくわかるようになる。

 キッシンジャーは、力を過信して交渉を軽視する「神学者」や、交渉の力を過信する「精神科医」の双方を退ける。それでは、真の交渉者とは、どのような人物か。答えを求めて、著者たちは、ローデシアとベトナムをめぐる交渉を主な事例にして、キッシンジャーの足跡を詳細に追いかける。そしてそこから、交渉術を磨きたい者が学ぶべき教訓を、数多く見出みいだしていく。

 本書が特筆するキッシンジャーの天才は、たとえば「ズームアウト」と「ズームイン」の絶妙なバランスとして特筆される。「ズームアウト」とは、交渉をする目的を明確にし、一貫した戦略を持ち続けることの大切さである。「ズームイン」とは、交渉に際して直面する相手方への洞察を深めることの大切さである。

 アメリカの目的と戦略を一貫した姿勢で追い求めながら、関係者の利益を鋭く計算する。そして交渉相手が訴えることができる選択肢を一つ一つ封じ込めていく。「ズームアウト」は、交渉というものが、論理的な行動の積み重ねであることを、教えてくれる。

 同時に、外部環境のみならず、交渉相手の性格も徹底的に調査する。的を射た「共感」を示し、相手方の信頼を勝ち取っていく。「ズームイン」は、交渉が人間をめぐる科学の上に成り立っていることを、示してくれる。

 交渉とは、論理と感情、確度と変化を洞察する、高度に知的な作業だ。そのことを知るために、本書は極めて有益な良書だ。野中香方子訳。

無断転載禁止
458773 0 書評 2019/02/24 05:00:00 2019/03/04 10:41:48 キッシンジャーの超交渉術(15日、東京都千代田区で)=三浦邦彦撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190223-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み_東京2020オリンピックパラリンピックキャンペーン

アクセスランキング

 


東京オリンピックパラリンピックオフィシャル新聞パートナー

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ