世を観よ 坂井音重著

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 評・加藤 徹 中国文化学者・明治大教授

 心を静めて、ありのままを深く見通すことを「観じる」という。著者は1939年、観世流シテ方の能楽師の家に生まれ、3歳で初舞台を踏んで以来、世を観じながら生きてきた。本書は、そんな著者が10年にわたり新聞に連載してきた珠玉の随筆である。

 能は、650年の歴史をもつ。著者は言う。「長く続いただけでは何の意味もない。『人間の生命力』が吹きこまれていなければ形骸化し、その外見の様をみるだけでは、人から人へ伝えられていく芸能とはいえない」。

 著者のまなざしは敬虔けいけんだ。子供時代のこと、日常のこと、飼い猫の思い出。春の桜の花を見て能の『熊野ゆや』を思い、白いアスパラガスの淡泊な味わいに、磨きあげられた能舞台に立つ能楽師を連想する。アメリカやロシア、中国など海外でも能を舞ってきた。2011年の東日本大震災の被災地では、東北ゆかりの能『とおる』を舞った。「能を通して物事を見ると、現代でも気づくことがたくさんあるわけですよ」

 自然と人間を愛する著者のまなざしを通して、無常の世の中が美しく見えてくる。(幻冬舎メディアコンサルティング、1200円)

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470773 0 書評 2019/03/03 05:00:00 2019/04/02 16:26:20 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190311-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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