精日 加速度的に日本化する中国人の群像…古畑康雄著 講談社+α新書 860円

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変わる対日観

 評・加藤 徹(中国文化学者 明治大教授)

日本サッカーファンと著者(左から2人目) ◇ふるはた・やすお=共同通信記者。同社の中国語ニュースサイト「共同網」運営に携わった。
日本サッカーファンと著者(左から2人目) ◇ふるはた・やすお=共同通信記者。同社の中国語ニュースサイト「共同網」運営に携わった。

 中国人の対日意識の変化は激しい。親日、反日、知日のどれとも違う「精日せいにち」の存在が、日中両国で注目されている。近年、上海や南京の戦争遺跡で、若者が日本軍の軍服を着て記念撮影して当局に拘留される事件が起きた。中国の王毅ワンイー外相は、昨年3月の全国人民代表大会の記者会見で、精日は「中国人のクズ」だと吐き捨てた。精日は「精神日本人」の略語だ。

 ジャーナリストとして長年、中国と向き合ってきた著者は、「精日」を自認する中国人を取材し、精日の多様さと実態、外から見えない中国社会の激変ぶりを明らかにする。

 精日の実像は「日本軍国主義愛好者」でも「クズ」でもない。良好な高等教育を受けた20歳代から30歳代が多い。黙々と努力して自分の周囲の環境を日本のレベルに近づけようとする人々を指す。彼ら、彼女らが語る本音は刺激的だ。

 中国当局により「精日」はネガティブな言葉になった。が、昨年のワールドカップの日本対セネガル戦の時、日本サッカーの善戦をたたえる「今晩、我々はみな『精日分子』となった」という大胆な文章がネットに掲載され、話題となった。ある「精日」は言う。「政府が『精日』に汚名を着せる理由は、彼らが日中両国を対比すると、政府の無能さや腐敗が分かってしまうからです」「最近になって多くの中国人が日本の文化や社会を好きになったのは、政府が二〇年来、東の隣国に悪意ある宣伝をし続けた結果、宣伝そのものが疲弊したから」

 日本へ留学や旅行に行った中国人は、日本は素晴らしいという印象を持ち帰る。中国政府が日本にぎぬを着せようとしても、民衆は信じなくなっているのだという。中国社会は変化している。日本は中国からますます必要とされており、日本はそのニーズを受けとめ存在感を増すべきだ、という著者の結論は説得力がある。

無断転載禁止
479900 0 書評 2019/03/10 05:00:00 2019/04/02 16:23:03 上海の日本サッカーファンと著者(左から2人目。本書中から) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190309-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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