予測マシンの世紀…アジェイ・アグラワル、ジョシュア・ガンズ、 アヴィ・ゴールドファーブ著 早川書房 1700円     

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産業構造を変えるAI

 評・坂井豊貴(経済学者 慶応大教授)

◇Ajay Agrawal◇Joshua Gans◇Avi Goldfarb=共にカナダ・トロント大ロットマン経営大学院教授。
◇Ajay Agrawal◇Joshua Gans◇Avi Goldfarb=共にカナダ・トロント大ロットマン経営大学院教授。

 人類は、電車や自動車の登場により、短時間で長距離を移動できるようになった。技術の発展が、人間の足を進化させたかのようにだ。だが電車も自動車も、足そのものではない。たとえばそれらはサッカーボールを蹴れない。あくまで上手うまく「移動」の機能を果たす機械である。

 同様に、人工知能も、知能そのものではない。たとえばそれは質問者の意図をみ取らない。ただし質問文を構成する言葉から、回答にあたるものを予測できる。それは上手く「予測」の機能を果たす機械なのだ。近年の精度の高まりは著しい。カードの不正利用の検出や、病名の診断などは、人工知能の得意分野だ。保釈された被告が逃亡するかは、人工知能のほうが、人間の裁判官よりはるかに正確に予測できるという。

 著者らは予測の精度の変化が、いかなる経済変化をもたらすかを論じる。たとえばアマゾンの人工知能が予測する「おすすめ商品」の表示。現在はユーザーがその商品を購入すると、アマゾンは発送を始める。しかし、もし将来、予測の精度が高まると、ユーザーが購入を決める前に、アマゾンは発送を始められる。冗談のような話だが、同社は2013年に、この「予測発送」の特許を米国で取得している。

 もちろん予測は外れうる。「予測発送」が外れたら、アマゾンは商品をユーザーから回収せねばならない。このとき同社は回収作業を行う流通業者を、自ら抱えたくなるだろう。すると産業の統合が起こる。予測の精度の変化は、産業構造の変化をもたらすわけだ。

 予測の精度の変化が、自分の事業にどのような変化を与えるのか。この、過去の参考データがない問いに、人工知能は答えられない。だからここで人間は「SFばりの思考実験」に挑まねばならない。その作業は容易たやすいものではないが、人間の知能こそが必要とされるものだ。そのための情報と思考の仕方とを、本書は冷静に教えてくれる。小坂恵理訳。

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492915 0 書評 2019/03/17 05:00:00 2019/04/02 15:50:13 書評用(11日、本社で)=吉川綾美撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190316-OYT8I50038-T.jpg?type=thumbnail

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