「砂漠の狐」ロンメル…大木毅著 角川新書 900円
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新事実基に描く名将
評・加藤 徹(中国文化学者 明治大教授)

本書を読み、ロンメルのみならず、ドイツという国や、近現代史のイメージが一変した。
第2次世界大戦中、ドイツの名将ロンメルは、戦車を中心とする装甲部隊を率いた。北アフリカでは、連合軍をスマートな作戦で
ロンメルは、戦術レベルでは傑出した指揮官だったが、戦略レベルでは問題だらけの司令官だった。奇襲を重視するあまり、補給を無視して大
ただ、ロンメルが、非人道的な命令はたとえ総統のものでも無視したことは本当である。
もともとロンメルはドイツ軍の傍流だった。ドイツ将校団の本流であるプロイセン出身者ではなかった。士官学校も出ていなかった。第1次世界大戦で戦功を立て、なんとか軍に残れたものの、その後はくすぶっていた。そんな彼を総統のヒトラーが引き上げた。オーストリア出身のヒトラーも、ドイツでは「傍流」だった。
2人の信頼関係は、戦局の悪化で地に落ちる。ノルマンディ上陸作戦の後、ロンメルはヒトラーに講和を進言するが、決裂。翌月、ヒトラー暗殺未遂事件が起きた。ロンメルは無実を主張したが、服毒自殺を強要された。彼の遺体の顔のすさまじい表情について、夫人の証言は生々しい。ロンメルは本当に「無実」だったのか。近年の実証的研究で意外な結論が出ている。
ロンメルとその時代について、21世紀に入ってからも多くの新事実が判明している。著者によると、日本のアカデミズムは軍事を扱わず、ロンメルについての認識も欧米より40年近く遅れているという。本書がそのような潮流を変えるきっかけになることを願う。












