日中の失敗の本質…宮本雄二著
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大変な時代だからこそ
評・加藤 徹 中国文化学者 明治大教授

「大変」という日本語は変だ。本来「大きな変化」はビッグチャンスのはず。しかし日本人は「大変」を、もっぱら、苦労が多く対処しがたい事態というマイナスの意味で使う。
今は大変な時代だ。驚異的な技術革新と、社会や経済の急速な変化が、既存の制度や仕組みを圧倒し、適応不能に陥れている。「
著者は1946年生まれの元外交官。若いころ、なぜ日本は負けると分かっている対米戦争という愚かな間違いを犯したのか、という疑問を抱いた。大学では国際政治学者の高坂
世界も日中関係も急変中だ。中国のGDPは2010年に日本を越え、17年には日本の2・5倍弱になった。中国の存在感は増した。が、尖閣問題や南シナ海の人工島建設など中国の強硬姿勢や、共産党がすべてを指導する権威主義的な「中国モデル」の提唱は、欧米の警戒感を呼び覚ました。
日中両国は、世界の変化の中で両国関係の新たな位置づけを模索すべきであった。しかしナショナリズムや、世界の変化のスピードについてゆけぬ国民の「空気」のせいで、互いの位置づけに失敗。日中関係は低迷した。まだ希望はある。著者は、中国の台頭がつきつける問題を「第三の黒船」として日本が変わる力とすべきだ、と主張する。日中両国が互いに学びあい、世界を変えるため協力できることは多い。著者は、日本の大局的な戦略を提言する。
かつて、南北戦争後のアメリカでも国民は「大変な時代」に苦悩した。後世から振り返ると、アメリカが世界のリーダーとなる転換期に他ならなかった。本書は、われわれが生きている今の世界の変化の意味を再考し、「大変」を前向きにとらえるうえで、刺激的な本である。
◇みやもと・ゆうじ=2006~10年、中国大使。著書に『これから、中国とどう付き合うか』。












