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[本よみうり堂]奇跡の集落 多田朋孔、NPO法人地域おこし著

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復活に見る日本の未来

 ◇評・藤原辰史(農業史研究者 京都大准教授)

 新潟県十日町市の池谷集落の「奇跡」を描いた本である。廃村寸前にまで追い詰められた池谷集落。六世帯十三名が住むのみだった限界集落が、なんと、中越地震という逆境を乗り越え、十一世帯二十三名にまで増えたのだ。五世帯増。わずかな数に聞こえるかもしれないが、池谷集落にとっては息を吹き返したというに等しい。しかも、この五世帯は、単に新潟県のある地域の話にとどまらない。人口減少が着々と進む日本の未来にとっても、決して見過ごすことのできない堂々たるV字回復だ。

 著者は、池谷集落に地域おこし協力隊として、東京から引っ越してきた。ほぼ家族をだますようにしてここに連れてきた猪突ちょとつ猛進型の彼は、元京都大学応援団長でコンサルタントの会社に勤めていたというユニークな過去を持つ。

 池谷集落復活の理由をとりあえず三つにまとめよう。第一に、空気作り。いきなりお金、制度、イベントの注入では効果なし。まず地域の人たちが仲良くなる基盤を作り、地域の「宝」を皆で発掘し、自分たちが地域おこしの当事者で主役だという空気を醸成し、ブレない信念を持った人物たちが中心にいること。第二に、よその地域から頻繁に訪れる「関係人口」との縁をじっくり深めていくこと。通い耕作のために土地を貸すなど、柔軟な対応が必要。よそからの視点を失った集落は元気がなくなる。第三に、中心ではないからこそ中心にはない新しい持続的産業構造を提案できる、という前向きなヴィジョン。都会にはない魅力的な職場づくりに欠かせない視点だ。この三つの視点は、会社、家庭、地方自治体、国、どこでも役立ちそうだ。

 ところで、私が本書を選んだ最大の理由は、彼の配偶者の秀逸なエッセイである。「猛吹雪、虫刺され、無謀、話すのも嫌、外堀固められる、迷惑な話」……移住先と夫への反発や違和感を、この集落の魅力とともに妻が淡々と書く。この作業が実は最も大事なのかもしれない。

 

農山漁村文化協会 2600円
農山漁村文化協会 2600円

◇ただ・ともよし=地域おこし協力隊として池谷に移住 ◇NPO法人地域おこし=ボランティア受け入れ団体。

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520064 0 書評 2019/01/27 05:00:00 2019/01/27 05:00:00 奇跡の集落(18日、東京都千代田区で)=松本拓也撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190403-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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