第6の大絶滅は起こるのか The Ends of the World…ピーター・ブラネン著 築地書館 3200円

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5度の地獄の犯人は?

 評・加藤 徹(中国文化学者、明治大教授)

◇Peter Brannen=科学ジャーナリスト。惑星科学が専門で宇宙生物学などの記事を執筆。本書が初の著書。
◇Peter Brannen=科学ジャーナリスト。惑星科学が専門で宇宙生物学などの記事を執筆。本書が初の著書。

 科学はロマンだ。本書は地球史の啓蒙けいもう書だが、推理小説よりスリリングだ。

 過去5億年のあいだ、突然の大量死で動物の命がほとんど失われたことが5回ある。いわゆる五大絶滅のたびに、地球は地獄さながらの朽ち果てた墓場と化した。環境の激変と大量死を繰り返し引き起こした犯人は誰か。

 科学ジャーナリストである著者は、古生物学者、地質学者、天文学者、地球物理学者などに会い、大絶滅の様相と、犯人像の推理を聞く。彼ら・彼女らはブラック・ユーモアの持ち主が多い。理系の科学者ながら「世界滅亡後の温室」とか、「大量絶滅の『オリエント急行殺人事件』理論」、「介護施設爆撃のシナリオ」など、キャッチーな表現にもたけている。

 五大絶滅の最後は、6600万年前の白亜紀末の大絶滅だ。恐竜も、子孫である鳥類を除いて絶滅した。犯人は誰か。科学者のアルバレス親子は小惑星衝突説を提唱した。彼らは毒舌家で、火山活動説を提唱する学会のライバルを「野球の試合に負けて、消えたかと思っていたよ」、古生物学者を「あまり上等な科学者とは言えないよ。どちらかと言えば切手収集家に近い」とこきおろした。そんなアルバレス親子の説を、地質学者のゲルタ・ケラーは「ナンセンス」と鼻で笑う。主犯はインドの火山活動だと推理する彼女の人生行路は、すさまじい。銀行強盗に銃で撃たれ臨死体験をしたこともある。

 個性豊かな学者たちの侃々諤々かんかんがくがくたる論議から、五大絶滅の黒幕の姿が浮かびあがる。ネタバレは自粛するが、黒幕が下手人に使わせる凶器は毎回「炭素循環」だ。現在「第六の大絶滅」のスイッチに指をふれているのは、人類だ。

 破局の回避は間に合うのか。緊迫の議論ののち、本書は、十数億年後の未来の地球までをも語り、不思議な詩情のなかで終わる。地球と自分への愛惜の情がわいてくる。西田美緒子訳。

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572189 0 書評 2019/05/05 05:00:00 2019/05/16 16:27:43 第6の大絶滅は起こるのか https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190508-OYT8I50043-T.jpg?type=thumbnail

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